2011年12月31日土曜日

新しい薬をどう創るか 京都大学大学院薬学研究科

ゲノム創薬、立体構造解析やケモインフォマティクスによる新薬開発手法の解説や、ドネペジル(アルツハイマー治療薬)や抗ウィルス薬の開発物語などをまとめたブルーバックス。

著者は、京都大学大学院の教授・准教授陣10名。

特に、インシリコスクリーニングの説明が分かりやすく、大変参考になった。

第1章 薬創りは『健康と病気の違いを知ること』から始まる 中山和久
第2章 薬を合成する〜薬創りに王道なし、薬の創造から製造まで〜 竹本佳司
第3章 薬のターゲットタンパク質の構造を決定する 加藤博章
第4章 薬をデザインする〜勘と経験からコンピュータナビゲーションへ〜 中西 功
第5章 薬がなぜ効くか調べる 金子周司
第6章 抗ウィルス剤の開発 大高 章
第7章 日本発 世界が驚いたアルツハイマー病治療薬の開発 杉本八郎
第8章 生体防御の仕組みから抗菌剤を創る〜平成版ガマの油の話〜 松﨑勝巳
第9章 体の中の薬の動きを自由にあやつる 高倉喜信
第10章 ゲノムで変わる医療、創薬 辻本豪三



新しい薬をどう創るか (ブルーバックス)
新しい薬をどう創るか (ブルーバックス)京都大学大学院薬学研究科

講談社 2007-04-20

2011年1月5日水曜日

抗癌活性を持つ化合物Aの研究(1)

とある抗癌活性を持つ化合物Aがどんな蛋白質と結合しているのかについて研究している。

既知の蛋白質の立体構造の情報を使ったin silicoスクリーニングで、化合物AがERαと結合する可能性が出てきた。

そこで、この化合物AとERαとの結合活性をin vitroで観察する。シグナル伝達を阻害する作用がある本化合物は、本当にERαと結合するのだろうか?

2010年4月20日火曜日

総説を書くときのチェックリスト

総説の書き方のポイントをまとめました。

□ 包括的な内容で、多数の論文を要約する。
□ 刊行された論文を厳密に評価し、個々の論文からは得られない大局的で重要な結論を含める。
□ 研究論文より幅広く読まれるため読者層を想定する。
□ 解説的な文章を書く。
□ 深く、明確な考察に裏付けられた批評を展開しながら、自らの理論を体系的に構築する。
□ アウトラインを作成し、情報・議論を一貫させる。
□ 広く認められている論文のうち、著者の見解を指示するもの、指示しないものを熟知する。
□ 著者の見解と一致しない論文は、見解の不一致について考察する。



2010年3月29日月曜日

事業推進会議に参加して

さまざまな研究科から教授など20名程度が参加されました。

議題はプロジェクトの進捗状況の報告や今後の事業計画について話し合われました。

研究の具体的な目標設定および事業計画の達成項目の検討と、参画教員のエフォート状況把握が議論のポイントとなりました。

そこでプロジェクトリーダーが、まず具体的な目標値や課題を明示して、それらに対して個別の教員に依頼していました。

やはり、物事を達成するときには具体案を提示しておいて、それを元に分担者で叩き上げていく必要があると感じました。

他部局との連携の上でのプロジェクト進行は運営が非常に大変です。

したがって、効率的な事業運営が必要不可欠となります。

私が所属するセンターは、問題解決能力が高く、非常に行動が早い先生方が参画されています。

このような会議に出席し、議事録をとることは、一教員としてとても勉強になります。

2010年3月18日木曜日

バイオサイエンスの統計学









20年前に出版された本です。

図解されているのでとてもわかりやすいです。特に、相関と回帰は参考になりました。



【目次】

序説 統計学とは
  統計学はばらつきを伴う情報を、客観的に分析、評価する学問
  統計学の2つの機能
1 検定の原理
  検定法の共通原理
  身近な例にみる検定法の原理
2 関連する2群の差の検定
   一標本t検定
   符号検定
   Wilcoxon検定
3 独立2群の差の検定
   二標本t検定
   正規検定
   等分散の検定:F検定
   Mann-Whitney検定
4 計数値データの検定
  1要因の場合
   比率の検定
  2要因の場合
   2×2分割表
   l×m分割表
5 独立多群の差の検定
   一元配置分散分析法
   分散の均一性の検定:Bartlett検定
   Kruskal-Wallis検定
6 関連多群の差の検定
   二元配置分散分析法
   Friedman検定
7 回帰と相関
  回帰直線の求め方とその検定
   直線回帰
   回帰係数の検定
   回帰係数の差の検定
  相関の求め方とその検定
   相関係数(ピアソンの相関係数)
   相関係数の差の検定
   マハラノビス距離と等確率楕円
  
8 標本の分布型とその検定法
   分布型の検定
   スミルノフの棄却検定

9 統計の正しい利用と解釈
  標本の偏り
  データの表現法
  検定法の使い分け
  検定結果の解釈

付録・統計数値表


バイオサイエンスの統計学—正しく活用するための実践理論

2010年3月9日火曜日

今日買った論文執筆本

■ 世界に通じる科学英語論文の書き方 執筆・投稿・査読・発表


論文の書き方、発表の仕方、レビューの書き方、CVの書き方など幅広い項目について説明されています。

ベストセラーのようですね。

2010年3月8日月曜日

生化学実験とムダの話

今日は、東京都健康長寿医療センター研究所、研究部長の遠藤玉夫先生の記事をご紹介します。

私も論文にならない沢山の実験をするタイプです。この文章を読んで、背中を押された感じがしました。


 さて生化学実験とムダの話である。私も若い頃徹夜実験を組み、朝結果を得てムダな実験だった、と何度思ったことであろうか。また、学生同士や助手の先生と話しをして、そんなのやってもムダだ、と言われながら、ムダと思いつつ行なった記憶も多々ある。しかしこれはムダと呼ぶべきものではなく、確かにこういうことはない、ということを実証したと考えるべきではないだろうか。これまで自分は、好奇心を持って好きなことに挑戦し続けてきた。その間には相当ムダな実験も行なって来た。これは単に自分の頭が悪いだけで、実験をやってみなければ分からなかっただけのことかも知れない。確かに論文に実際使用したデータに関する実験だけをやれば最短で結論に達することができたはずである。しかし、出発点から目的地まで地面を歩く時、足跡だけの地面があれば歩くことが可能だろうか。おそらく答えは「否」である。「こういうことではない」という結果を自らの手で得ることこそ研究者にとって大変大事なことである。傍らから見ると一見ムダに見えるかもしれないが、若い皆さんには勇気をもってムダな実験を行なってほしい(指導教官にとっては金銭的に大変辛いだろうが)。

生化学 第82巻 第1号 p. 1 2010


『出発点から目的地まで地面を歩く時、足跡だけの地面があれば歩くことが可能だろうか。おそらく答えは「否」である。』

がとても共感できる一文でした。

河原の水面に見えている石の上を歩いて渡るような状況です。

私にとって、ムダだった実験は、うまくいかないことを証明すると同時に、集中力や技術の鍛錬になったことは間違いありません。

その一方で、声高に「ムダな実験はするな」とおっしゃる方がいるのも事実ですが…。