2009年12月25日金曜日

英語論文ははじめから英語で書くべきか?

おおまかな、あるいはかなり詳細な下書きを日本語で準備してから、英語にとりかかるべきだと思う。

不慣れな外国語で書くという作業が自然な思考を妨げる恐れがある。推敲の段階でも、外国語であるがゆえに論理的なおかしさや「わかりにくさ」に気付きにくい可能性がある。


マテメソとリザルトは直接英語で書き、ディスカッションは日本語の下書きを用意することが著者のお勧めです。

2009年12月22日火曜日

英語論文を早く読むコツ

0.アウトプット思考で読み、絶対に全文読まないこと(心がけ)
1.仮説思考で論点をクリアに(5分)
2.論点に対して情報になるところを探す。キーワードまたは各パラグラフの最初の一行だけ読む(10分)
3.めぼしをつけたところを読んで、情報を収集する(10-15分)



パラブラフの冒頭には通常、キーセンテンスが書かれています。このキーセンテンスをスキミングすることで、素早く全体像を把握しながら自分の読むべきところを探し出していきます。

また逆に考えると、キーセンテンスを意識して論文を書くことで、分かりやすい文章を書くことができます。


【参考図書】

■ 論理的な文章が自動的に書ける! 倉島 保美

2009年12月8日火曜日

環境の変化に対応できる人

人間というものは新しい環境の中に解き放たれてしまえば、大方は意外にその環境に順応していけるものだということである。この時の経験は、ある意味眠っていた自分の感性や価値観を改めて目覚めさせる絶好の機会になったと思っている。

先行きを予測するのが非常に難しいこれからの時代をどのようにリードしていくか?それには、これまでの常識や固定観念にとらわれない「逆転の発想」を持ったリーダーが、ますます必要ではないかと感じている。

近藤裕郷 ファルマシア 45 1183 2009
変化に強い人が活躍し、変化を逆に利用できる人がリーダーとなる。

2009年11月21日土曜日

技術者・研究者に期待すること

株式会社NEC情報システムズ 半田 享 氏のセミナーを聴講しました。

講演内容は以下の通り。

 ・CGの黎明期を振り返って
 ・企業での研究開発

CG(コンピューターグラフィクス)の歴史は50~60年代から始まっているそうです。もともと冷戦時代にアメリカでレーダーを使った迎撃システムのために開発されたそうです。その後、産業応用が進み、1つの研究室から、PixerやAdobeといった有名企業が生まれていったそうです。一研究者の成果が60年経った現在、幅広く応用されていることに驚きを感じました。

技術者や研究者に期待することは、企業は新事業を立ち上げていく必要があり、そのためには異業種の融合や連携が必要不可欠になるそうです。その際に、異業種間の人的交流や技術のやりとりができるような人材が大切なのだそうです。

研究室や分野を越えて、他の研究者と交流することが大きな仕事を成し遂げる最初の一歩となりそうです。


【関連記事】

研究生活の転機には必ずメンターに恵まれた

【参考図書】

技術者・研究者になるために―これだけは知っておきたいこと 前島 英雄 2001
これから研究を始める方や、会社に入られる方におすすめです。

がんばらないで成果を出す37の法則ーアライアンス人間関係術ー 平野敦士カール 2009
他人と関わりながら仕事するために、どうコミュニケーションをとればいいかについて説明されています。

2009年11月20日金曜日

記録写真ではずせない、2つのポイント

1つは、人の頭がなるべくたくさん写るように撮影することです。
もう1つのコツは、看板や表示板を撮影することです。


シンポジウムや学会などの主催をお手伝いするとき、心がけていることです。ちょっとした角度の違いで、人数は同じでもずいぶん印象が異なります。

2009年11月19日木曜日

研究者の予算について


(1) 科学技術研究の予算は、なぜ他の予算よりも重要なのかに答えること

(2)なぜ日本で研究しなければならないのか?なぜ日本人が成果をあげなければならないのか?

(3)誰が研究を評価するべきか?

(4)研究資金は国が負担するべきか?



仕分けは厳しい処置ですが、Masahiro Kaminagaさんの述べられていることは考える必要があります。


【関連記事】

『科学』傷だらけ iPS細胞生んだ事業や科学未来館

2009年11月18日水曜日

研究室で活躍するノイズキャンセリングヘッドホン

SONY ノイズキャンセリングヘッドホン ブラック MDR-NWNC20/B

手頃な価格で、結構強力に遮音する。

飛行機や電車はもちろん、研究室内の音も話し声を含めて消してくれる。simply noiseと組み合わせれば、完璧に集中できる。

出張だけでなく、日常にも活躍している。

難点は、人が隣に来るまで気付かないこと。

2009年11月17日火曜日

Wordがフリーズしたときの対応

Wordで文章を書いているときにフリーズした場合、Macでは強制終了(option+command+esc)で強制終了する。強制終了する前に、Word画面をキャプチャ(command+shift+4)しておくとその画面を見ながら文章を復旧させることができる。Wordの自動保存機能とcommand+Sで頻繁にセーブしながら書くようにすれば、ほぼ文章のロスは防ぐことができる。

【手順】

 1.Wordがフリーズ
 2.画面をキャプチャ(command+shift+4)
 3.強制終了(option+command+esc)

2009年11月15日日曜日

『科学』傷だらけ iPS細胞生んだ事業や科学未来館

 「国が掲げる科学技術立国が揺らぎかねない」。十三日の行政刷新会議の事業仕分けで、科学技術関連の事業が続々とカットの判定を受けた。「不要不急の事業」を削ることが仕分けの目的とはいえ、将来、日本の科学技術研究を担う若手にも余波が及ぶ。「頭脳流出に拍車がかかる」。関係者に危機感が広がった。 



研究生活環境に大きな変化がこれから訪れそうです。

2009年11月12日木曜日

論文執筆に使える表現

◆引用の後に意見を述べる表現

これは〜ということを明らかに表している
This clearly shows that ~

◆問題点の考察を始める表現

では、〜を詳しく検討しよう
I will now discuss ~ in detail

◆過去の研究の概要を述べる表現

〜に関するいくつかの研究がなされてきた
Several studies have been made on ~

◆研究に関心があることを述べる表現

〜についての関心が高まってきている
The concern with ~ have been growing

◆説明する表現

Aで論証されていることはBである
What has been demonstrated in A is B


【参考書】

英語論文 すぐに使える表現集 小田 麻里子, 味園 真紀 1999

的確な表現が論文を書くときに非常に参考になる。

2009年11月11日水曜日

プレゼンテーションのコツ

プレゼンでは、資料を念入りにチェックして、リハーサルも周到に行っておくのがよいでしょう。プレゼンの目的は、説明することではなく、相手に納得してもらうこと。納得してもらうためには、分かりやすい資料を準備することがポイントになります。




【参考書籍】

■ 学生・研究者のための 使える!PowerPointスライドデザイン 伝わるプレゼン1つの原理と3つの技術 宮野 公樹 2009

プレゼンテーションスライドの改善例がビフォーアフターで分かりやすく説明されています。

2009年11月10日火曜日

高機能オンライン会議のススメ

“見える”コミュニケーション、V-CUBE
http://www.nice2meet.us/ja/service/meeting/function/

これで離れた相手とも打ち合わせができます。
ホワイトボードが便利です。

【関連記事】

議事録の書き方

2009年11月9日月曜日

EndNoteでの引用文献の削除

1.引用箇所を選んで、Edit citation(s)
 複数引用の場合、一旦全部がcitation #に戻る。
2.取り除く文献を確認し、Remove
3.ツール > EndNote X1 > Format Bibliography

[EndNote]

使用環境
EndNote X1, Word 2004 mac


【参考図書】

■ 最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版

有意義に会議に参加するための5つの質問

1.会議の目的を明確に理解しているか?
2.自分がいる必要性を理解しているか?
3.会議の内容が理解できているか?
4.会議は自分にとってメリットはあるか?
5.適切に発言できるか?



茂野 太陽 氏は、この5点がわからないと、会議がつまらなくなるとしています。何のために集まって、どんなゴールに向かうのかを予め共有する必要があります。私が参加する会議はスピーディーであり、目的が明確です。

【関連記事】

■ 議事録の書き方

2009年11月7日土曜日

いい仕事を生む「理想的な心理状態」(IPS)の12要素

(1)精神的落ち着き
「興奮」より、冷静かつ落ち着いた精神的静寂が効果的。

(2)肉体的リラックス
肉体的にもリラックスは緊張より優位。

(3)不安の解消
不安は根性を刺激するというのは間違っている。

(4)意欲(エネルギー)
ポジティブな感情が生む力。叱責やプレッシャーによる「負けん気」とは異なる。

(5)楽観的な態度
ポジティブ思考は楽観的態度から生まれる。

(6)楽しさ
上項と同様、ポジティブ思考は楽しむ態度から生まれる。

(7)無理のない努力
心と体の調和が取れている状態。

(8)自然さ
直感、本能の示唆を大切にする。

(9)注意力
自分やまわりの動きや立ち位置が正確につかめる状態。

(10)集中力
ポジティブなエネルギーと落ち着きがバランスよく合わさっている状態。

(11)自信
確信及び自信は、冷静さや落ち着きを生む。

(12)自己コントロール
自分のことを自分が制御しているという意識が大切。

長野慶太 プロの残業術。より引用

2009年11月6日金曜日

研究生活の転機には必ずメンターに恵まれた

日立製作所 神鳥 明彦 氏のセミナーを聴講しました。

講演内容は以下の通り。

 ・研究概要と技術開発について
 ・論文推移からみた研究人生
 ・研究方向性の選択
 ・プロジェクトの成功法
 ・ものづくりが人を育てる

論文数は13年間で38報もあり、社内No.1だそうです。非常にアクティビティーの高い方でした。印象的だったのは、タイトルにもある通り、研究生活の節目節目には優秀な先輩研究者が数多く現れるということでした。お話を聴きながら、良い出会いは良い成果に繋がるということを実感しました。

企業では特許に比べて論文はあまり重視されないと一般的に言われます。しかし、神鳥さんのお話では論文となることであらためて社内で注目され、予算がつくこともあったそうです。アカデミアでも企業でも論文の大切さは変わらないようですね。また、論文を書くと直感力が磨かれたそうです。これはちょと意外でしたが、他人の視点に触れることで直感力が培われるのかもしれません。

直感したらとにかく試せ。成功率は1割程度かもしれないが、失敗は必ず成功に繋がるとのことでした。これに関しては、実際に神鳥さんが遊びで作っていた装置が、別の研究の測定の突破口となる技術に繋がったそうで、遂に市販されるまで至ったのだそうです。素晴らしいですね。

今回のセミナーは学部生や大学院生に向けて行われていたので、学位を取得した後の研究生活の送り方についてもお話ししてくださいました。神鳥さんによると、博士号を取得した時点から10年近くは自分の技術を磨き、しっかり強みを作っておくことだそうです。これが木の幹のようにしっかりと土台になって、新たな分野への開拓に繋がるとのこと。

また、会社に勤める博士に求められることは、「顧客からの価値」と「シーズ技術」と「ニーズ」この3つのバランスをとりながら研究の方向性を決めることだそうです。アカデミアにはない視点を学ぶことができました。

研究ではとにかく自由にやることが大切だそうです。神鳥さんは部下に対して大まかな方向だけを決めて、後は本人に任せるのだそうです。このあたりはマネジメントとして参考にさせて頂きました。

最後に、神鳥さんのセミナーのまとめメモを記します。

研究者として大事なこと
発想は一人のアイデアから
直感したらすぐ試す
自分の時間を作る
社外に問い、世の中の流れを肌で感じる
広い視野で新しい分野も勉強する。
研究者は研究以外でききないということを自覚する
予算獲得も研究の一環である
学位は通過点である、責任が発生する
ものづくりを経験する。(ちょっと難しいくらい<3割くらいの難度>)

メンタル面
 技術力があれば絶対にやり遂げるという熱意が重要
 つねに研究をサポートしてくれる人に感謝する




【参考図書】

直感力に関して、参考図書を挙げておきます。

■ 直感力
直感力の必要性を述べた1冊です。

■ 99%は論理力 1%は直感力
相手の論理の弱さは、直感力で見つけることもできるそうです。

2009年11月4日水曜日

【本棚】様々な業界のプロが語る仕事論

プロ論。―才能開花編 (徳間文庫)
B‐ing編集部
徳間書店 2008


プロ論。―情熱探訪編 (徳間文庫)

B‐ing編集部
徳間書店 2008


仕事や今後の進路に悩む時、参考になります。


ぼくは悩んだ分だけ成長できた。 
浜口 直太  2009


メンターを持つと良いとよく言われます。
この本を読むとメンターを持つと、飛躍的に成長できるようになるかとがわかります。

2009年10月31日土曜日

Mac Firefoxユーザーが憶えておきたい6つのショートカット

ブラウズ時の基本ショートカット

以下、ブラウズ時に多用するショートカット。恐らく初期設定で使えたかと。。。

Cmd-L ・・・ ロケーションバーを選択 > 検索などで使用
Cmd-T ・・・ 新規タブを開く
Cmd-N ・・・ 新規ウインドウを開く
Ctr-Tab ・・・ タブを移動
Cmd-W ・・・ タブを閉じる
Cmd-Shift-T ・・・ 閉じたタブを元に戻す

*参考 Firefoxの キーボードショートカット 一覧



Firefoxはかなり使いやすいです。
この6つのショートカットだけでも、慣れると非常に作業がスピードアップします。

詳細はトブさんの記事を見てみてください。

2009年10月29日木曜日

BiomedExperts

Directory of pre-computed research profiles in BiomedExperts
http://www.biomedexperts.com/BrowseAuthors0.aspx

研究者の情報を調べるのに便利。

Googleで"BiomedExperts and "検索する方が早い。
http://www.google.com/webhp?hl=en

2009年6月19日金曜日

in silico 創薬 2009


本日、講義をしました。

in silico drug discovery: インシリコ創薬
in silico medicine: インシリコ医薬

我が国における創薬の場では、2つの問題点があります。

まず、創薬開発費用の高騰と臨床医薬品の減少です。市場に出たとしても、会社にとって利益をもたらす医薬品はごく限られています。次ぎに、インシリコ創薬研究者の人材不足が挙げられます。

このような背景を説明した上で、インシリコ創薬の可能性とその利用法について、研究室で行う実験レベルで具体的に解説しました。

薬学研究科と医学系研究科保健学専攻から40名弱の大学院生に受講して頂きました。

聴講してくださった皆様、ありがとうございました。講義で得た内容を、是非今後の研究に取り入れてご活用下さい。

研究室内の学生さんには今年も好評でした。データベースの使い方がウェット研究にすぐに利用できてよいみたいですね。


【参考文献】

■ 桑嶋 健一 不確実性のマネジメント 新薬創出のR&Dの「解」 2006
■ 勝部 純基 実学的創薬研究概論 2006
■ 厚生労働省医政局経済課 創薬の未来 新医薬品産業ビジョンと創薬のための5か年戦略 2007
■ 京都大学大学院薬学研究科 新しい薬をどう創るか―創薬研究の最前線 2007
■ 杉山 雄一 最新創薬学 2007−薬物動態学特性の解析は創薬のキーワード− 2007
■ 辻本 豪三 編 インシリコ創薬科学 2008




【関連記事】

● G-COE spring 2008 database
 講義の後半に話した、データベースやその使い方をまとめて記事にしています。

● in silico 創薬
昨年の講義内容です。

2009年1月31日土曜日

科学者維新塾


科学者維新塾
http://sites.google.com/site/nposoria/

緒方洪庵が幕末の大阪に開設した蘭学塾(科学者養成塾)は、科学者のみならず幕末・維新を切り開く多くの人材を養成しました。SORIA科学者維新塾は博士課程修了者、博士を目指す人達に政治家、小説家、ジャーナリスト、科学者、起業家など様々なキャリアへの道を示し、幅広い教養を活かして平成の維新を切り開き、将来の国際社会に貢献する人材を送り出すための養成塾を開講します。みなさんの参加と協力支援をお願いします。
NPO法人中之島SORIA (申請中)
理事長 塩川正十郎
塾長 河田 聡 
塾長 鈴木 寛 


博士過程を目指す方、進路を考えている方、ポスドクの方、様々な方にとって有意義な塾だと思います。


【関連記事】

● ポスドク問題を解決するために私たちができること
● 女性研究者の活躍への期待の高まり

2009年1月21日水曜日

女性研究者の活躍への期待の高まり



臨床医工学・情報学領域関西5大学連携事業主催の『第1回 理系女性人材育成シンポジウム 〜理系女性が社会で活躍するために〜』に参加してきました。

武庫川女子大学付属のスーパーサイエンスハイスクールの高校生から、大学教員まで100名近くの方々が集まられていました。会場では活発な議論が展開され、女性研究者への期待の大きさが感じられました。

本シンポジウムは、女性研究者の活躍に焦点を当てて開催されましたが、男性研究者やこれから就職を考えている学生の皆さんにとっても非常に有意義な内容でした。聴講内容をまとめておきます。


=====================

第1部
開会挨拶:福尾 惠介(武庫川女子大学 教授)
挨  拶:糸魚川直祐(武庫川女子大学 学長)
講  演:福尾 惠介(武庫川女子大学 教授)
「5大学連携支援事業における理系女性人材育成の目標設定」
講  演:北川 英基(武庫川女子大学附属中学校・高等学校 教諭、SSH推進委員会 委員長)
「女子校のスーパーサイエンスハイスクールから見えた理系女性人材の育成」
特別講演:辻  篤子 (朝日新聞 論説委員)
「理系女性に期待すること」

第2部
特別講演:渡辺 威郎
(大阪薬科大学 キャリアサポート課長、前塩野義製薬株式会社 理事)
「理系女性が社会で輝くために」
特別講演:高須恵美子(株式会社 資生堂 ビューティーソリューション開発センター センター長)
「理系分野の女性が企業で活躍するためには」
講  演:浜田  仁(オムロンヘルスケア株式会社 商品事業統轄部 事業推進部 マネージャ)
「健康医療機器分野の企業で求められる人材」
講  演:赤羽 悟美(東邦大学 准教授)
「大学において女性研究者・教育者として活躍するために」

第3部
講  演:中村 稚加(株式会社 新日本科学 薬物代謝分析センター 試験推進部 代謝研究グループ グループリーダー)
「医薬品開発受託研究機関における業務について」
講  演:尾嵜  文(和歌山県立医科大学附属病院 管理栄養士)
「医療現場において求められていること」
講  演:大安 裕美(大阪大学 特任講師(常勤))
「大学で臨床医工学・情報学分野の研究者として働くということ」
閉会挨拶:石田 寿昌(大阪薬科大学 教授)


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【理系女性が社会で輝くために 大阪薬科大学 渡辺 威郎 先生】

◆製薬会社で活躍する女性の3つの特徴

 1.専門性を極め、それを活用している。
 2.文系知識を身につけている。
 3.プラス思考で積極的である。

◆文系知識を身につけて活用する

 ・マーケティング理論、分析技術
 ・経営状態の的確な把握
 ・著作権の知識

◆表現力の増強

 ・語学力
 ・ITスキル
 ・表現力(プレゼン・文章力)

◆大阪薬科大学におけるキャリアサポートの例

学部1年生:自己理解
学部2年生:コミュニケーション
学部3年生:プレゼン
学部4年生:問題解決解決能力
学部5年生:インターンシップ

渡辺 威郎 先生は、理系研究者は文系分野の知識も習得して活用する必要があることを協調されていました。中松 義郎 先生のおっしゃるブンジニアを思い出しました。


【理系分野の女性が企業で活躍するためには 株式会社 資生堂 高須 恵美子 氏】

資生堂では、社員の9割は女性なのだそうです。「女性の能力を活用出来ないということは人材を無駄にしているということだ」という高須さんの言葉に共感しました。優秀な女性が結婚や出産で会社を辞めることは、会社にとっても社員にとってもマイナスですね。そこで、資生堂ではこれまで継続的に女性社員の支援策を検討し、施行してきているそうです。

例えば、wiwiwというインターネットを利用した育児情報や職場復帰のための情報提供システムや男性社員の育児参加支援制度など女性にとって非常に働きやすい職場環境であることが伺えました。さらに、2013年までに女性リーダーの比率を30%まで引き上げることによって、グループのメンバーとしてだけでなく、リーダーとしてグループを引っ張っていくことの出来る女性人材の育成にも積極的に取り組んでいるとのことでした。

ここで、高須さんが強調していたことが、これらの女性支援の取り組みは決して女性優遇処置ではないということ。女性優遇処置に陥ると、男女差別になってしまう上に、女性社員もそれを望んでいるわけではないと高須さんはおっしゃていました。このように、資生堂で施行されている数々の制度は、女性の視点から検討されてきているので、非常に良いシステムとなっているのでしょうね。

では、このような制度の検討や施行はどのように推進しているのでしょうか?それについても、高須さんは以下の3つポイントを挙げて説明されていました。

  1.明確な目標と行動計画を立てて、PDCA*を回す。

  2.推進体制を構築する。

  3.推進のキーパーソンが必要である。

(*PDCA: Plan Do Check Act 計画、実行、評価、改善を繰り返し、継続的に業務の改善活動を推進するマネジメント手法。)

このように様々な制度の説明を聞きながら、制度を整備するとともに、これまで男性に偏りすぎていた社会の仕組みを、女性が共に働けるような仕組みへと根本的に変えていく必要があると思いました。

◆男女がともにキャリアアップ出来る職場まで

 1↓女性は出産後退職
 2↓女性も子育てと仕事を両立
 3↓男女ともに子育てしつつキャリアアップ

資生堂では、第二段階から第三段階に向かって制度を整えているそうです。

講演の後半では、ご自身の経験を交えて女性のためのキャリア開発のポイントを挙げられていました。

 <武器>
  女性の視点、論理的思考

 <仕事と育児>
  60%くらいを目指すのがコツ 

 <必須事項>
  グローバルコミュニケーション
  石の上にも三年
 
 <進路>
  *マネジメント系
   得意分野と幅広い経験
   経営・経済・リーダーシップ・人間関係

  *スペシャリスト系
   知識を知恵に
   改善・改革


【健康医療機器分野の企業で求められる人材 オムロンヘルスケア株式会社 浜田 仁 氏】

講演の前半では、理系研究者の持つ論理性の特性について興味深い考察をされていました。一般的に、理系研究者は論理思考が優れていますが、それがデメリットともなる場合があるそうです。例えば、手を動かす前に論理的に結果をネガティブに予測してしまうということです。予測はネガティブでも、実際にやってみたらそうではない場合もありますね。浜田さんは「風が吹けば、桶屋が儲かる」という話を例えに、私たちが見落としがちな“確率の落とし穴”を指摘されていました。

さらに、研究者は論理性とともに、感性を持ち合わせて専門性を極めるべきであると浜田さんは主張されていました。


上の図は、仕事をするために求められる能力についてまとめられたものです。知識や技能が基礎にあり、問題解決能力・対人折衝力・実行力を開発する必要があります。さらに、人間力のあるということが重要なのだそうです。リーダーシップにも必要なことですね。

後半では、企業への就職を希望する学生の方々に向けて、『企業で働くための心構え』についてもお話しされました。

1.学生時代に専門領域を極めることも大切

 ただし、それだけでいいという仕事も企業にはない。自分のやれることを限定せず、柔軟に考えると良い。自分のやりたいことの本質を持っていれば、許容出来る仕事の幅は広がるものである。


2.給料をもらうということはプロであるということ

 能力を常に磨くこと。人間性を高め成長していくのが本当のプロ。奇麗にはいかない。成長は苦しいものである。

◆機器分野で求められる人材

 ・ものを作るのが好き
 ・好奇心旺盛
 ・機器を使う立場に立てること

オムロン社の皆さんはちょっと気になる物があればすぐに分解して調べてしまうくらい好奇心旺盛な方が多いのだそうです。


【大学において女性研究者・教育者として活躍するために 東邦大学 赤羽 悟美 先生】


赤羽先生の教員になったきっかけ、留学、研究室の運営についてお話しされました。講演の後半に紹介されていた先生の研究生活におけるモットーをまとめておきます。

*よく学べ、よく遊べ
 やるべきことをすると同時に、興味のあることもやるようにすること。これによって人間性や思考の幅が広がる。

*失敗から学べ

*挫折は宝物
 仮説と異なる結果を得たとしても、熟考すること。考えることで、次に繋がる。


【医薬品開発受託研究機関における業務について 株式会社 新日本科学 中村 稚加 氏】

◆仕事に必要な2つのスキル

・ジョブスキル‥‥業務を通じて身に付く技術や知識(時間に応じて身に付く)

・ワークスキル‥‥先見力、洞察力、コミュニケーション力、判断力、統率力(積極的に意識しないと身に付かない)

*入社後すぐにやめてしまう新人社員の特徴

受動的な姿勢が抜けていないため、積極的に仕事を憶えることができない。

中村先生は、スライドごとにまとめられた手書きメモを確認しながら、ゆっくりとした口調で話されていてとても分かりやすいプレゼンテーションでした。


【大学で臨床医工学・情報学分野の研究者として働くということ 大阪大学 大安 裕美 先生】

大安先生は医歯薬系と理工系の融合研究の必要性と女性研究者の参画について講演されました。医歯薬系のニーズと、理工系の知識や技術を組み合わせることによって融合的な研究を推進することが可能なのだそうです。このような融合分野では女性研究者の柔軟な思考や対応力が生きるのだそうです。


【関連記事】

● 【研究本】ドクター・中松の発明ノート
 「ブンジニアのすすめ」とは、文系と理系を両方学ぶべきであるという中松博士の主張です。

● 【研究本】技術者・研究者になるために
 これから研究者を目指す方におすすめです。



【参考サイト】

* 関西5大学連携事業が本格始動—。理系分野で活躍する女性育成について考えるシンポジウムが本学で開催されました。|武庫川女子大学


* 一般社団法人 コンソーシアム関西

2009年1月17日土曜日

ポスドク問題を解決するために私たちができること

大阪大学 先端科学イノベーションセンター 科学技術キャリア創成支援室主催の理系キャリアセミナーに参加してきました。

学部3回生、院生、ポスドク、特任教員、助教、教授の方々が100名以上集まられていました。会場は満員で、参加者の皆様も積極的に発言されていて、活発なセミナーでした。

助教になるため・・・というよりは、博士人材の生き筋について考え、議論し合う場でした。私が学び、考えたことを記しておきます。

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理系キャリアセミナーVII
データから考える博士人材のキャリアパス
〜助教になるには〜

http://www.osaka-u.ac.jp/jp/seminar/367.html
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【『博士の生き方 キャリアパスの現状と展望』日経BP社 宮田 満 氏】

まず、世界経済の動向の説明からお話は始まりました。ここで挙げられたキーワードは、ナレッジベースとグローバリゼーションの2つです。

まず、これまでの産業は、天然資源や工業製品などのマニファクチャーをベースに発展してきました。しかし、今や製薬業や情報通信業といったナレッジをベースとしたに移行しつつあるということでした。したがって、今後はいかに情報を利用していくか、良質の情報を生み出せるかということが重要になるのでしょうね。

つぎに、ネットワークの進歩によりグローバル化が加速しているということを話されました。物流のみならず、資本・情報・人材までもが世界規模で取引されたり、共有化されたりするようになっています。このような動きは企業では顕著なのだそうで、大学ではやや遅れ気味であることを宮田氏は指摘していました。この点は実は大学にとって重要なポイントだと思いました。なぜなら、大学はそもそも知識集約の場であるからです。したがって、大学もグローバル化をさらに進めることが、さらなる発展につながるのでしょう。またこれにいって、前述のナレッジベースの社会への変化が、大学にとって追い風となることでしょう。


本題に入る前に、宮田氏は私たちに2つの質問をされました。

  1.いつも時価を最大にするのが最良の選択か?
  2.いつ、時価を最大にすべきか?

宮田氏の意見は、後ほどご紹介します。


本題の前半では、日本国内の博士取得者の動向について解説されました。博士取得者は15年ほど前から比べて倍増しているにも関わらず、アカデミックポストの数はほとんど変わっていないとの統計値でした。さらに、今後は教員定年延長によるポスト不足と少子化による定員減少による大学数の減少により、ますますアカデミックポストの増加は望めないのが現状です。これが、このブログでも以前取り上げたポスドク問題として最近一般的にも認識が広がりつつある事実です。

後半では、阪大内のアカデミックポストの数と在任者の平均年齢についての調査結果が示されました。平均的には、30~40歳の間に助教、講師、および準教授になられているそうです。このような調査結果はおそらく日本で初めての試みであろうということでした。科学技術キャリア創成支援室の調査力の賜物ですね。

▼質問に対する宮田氏の意見

1.いつも時価を最大にするのが最良の選択か?
 → 必ずしもそうではない。
2.いつ、時価を最大にすべきか?
 → 長期的展望
 → 常なるチェック
 → 運・不運のマネジメント


宮田氏のご講演のまとめです。

現在のポスドク全員をアカデミックポストで吸収することは不可能である。アカデミックに対する固定概念を捨てて、アカデミックポストへ固執せず、幅広い業種に視野を広げて社会に貢献出来る人材になるべきである。これから数年の博士取得者の生き方が、現在の学生の良いロールモデルになる。自らの手で仕事を創り出していこう。


★博士取得者向けのリクルート情報も紹介されました。

PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)採用情報
35-45歳で、チーム力があり柔軟な思考を持った研究者を随時募集しているとのことです。審査は、論文と面接により行われるそうで、採用率は10%くらいだそうです。ライフサイエンス分野の審査を担う職で、企業よりはアカデミアに近い業種とのことです。現在、人材が非常に不足しているので、求人中だそうです。


【パネルディスカッション】
ファシリテータ:
 宮田 満 氏 (日経BP社)
パネリスト:
 兼松 泰男 教授 (先端科学イノベーションセンター)
 福崎 英一郎 教授 (工学研究科)
 小林 傳司 教授 (コミュニケーションデザインセンター)

<質問:(宮田氏)助教になるにはどうしたら良いのか?>

(兼松教授)ポストの選考法について

一次選考の書類審査では、論文数を評価し、二次審査では、人柄を審査する。大切なのは、採用する側にとって、一緒に働きたいと思える人材であること。また、申請者の人となりが予め分かっている場合は審査しやすい。

(福崎教授)求められる博士力

*学歴・専門・国際経験
*受動的能力(専門知識・語学力)
*能動的能力(提案力・説得力・リーダーシップ)
→ リアリストたれ!
   自分の棚卸しを行い、博士力をチェック
   不足しがちな能力の開発に心がける
   国や業種に対するこだわりを捨てる
   大企業至上主義からの脱却

(小林教授)全員が助教にはなれない。できるとしたら生まれ変わるくらい。

現在の状況からすると、アカデミックポストにつけるかどうかは運任せに近い。周囲との競争から、協同へ。これは、アライアンスが大切だと言うことですね。
博士取得者が集まって、国家政策への提言を行うべき。
参考:日本の科学技術政策の要諦(PDF)

<質問:能動的な活動事例の具体例とは?>

(小林教授)ポスドクは一人で悩んでいる。

最近10年程度に整備された新しい制度で進んでいるので、問題が発生して当然であるし、教授世代は経験がないため認識がないと考えるべき。そこで、博士取得者は、ネットワークを形成し、継続的にキャリアパスに関する情報を集積・共有していく必要がある。また、そのような活動を通して、様々な要望を政府に提案していくことによって、次の世代の研究者の環境が整うことになる。

<質問:助教はそんなに良い職のか?>

(兼松教授)自分のやりたいことを深く突き詰めると・・・。

自分のやりたいことは悩んでいるだけではだめで、人と話すことによって方向性が決まる。そうすると、求めている職種は、必ずしもアカデミックポストでないこともある。

<質問:(宮田氏)本セミナーのまとめ>

(小林教授)大学は研究所ではない。

大学教員は、研究職ではないことを認識すること。まず、教育ありきで、研究がある。ただし、大学の研究所は研究職である。音楽・歴史・政治・思想について語れる大学人になってほしい。

【感想】

確かに、政策上の不備と景気悪化によって、ポスドク問題の解決は困難化しています。しかし、私たち自身が漠然と不安に陥っているのではなく、むしろ能動的に活動することが、次世代の研究者の卵が育つ環境を整えることに繋がると認識しました。

私も自分の出来ることをやっていきます。


【参考書籍】

■ 1の力を10倍にする アライアンス仕事術 平野敦士カール 2008
昨年非常に注目された仕事術の本です。平野氏は「お財布ケータイ」の開発者です。元々専門家ではなかった彼が「お財布ケータイ」の開発に成功した理由は、周囲を巻き込んで仕事を進める力にあったそうです。


【関連サイト】

* ポスドクの厳しい現実(2009/01/19 RANKING MAIL 第1238号)|ウェブマスターの憂鬱
今回のセミナーに関して、宮田 満 さんのブログに記事が更新されました。


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● 1の力を10倍にする アライアンス仕事術 平野敦士カール|山といえば川
 コメントも頂いた平野敦士カールさんの著書をまとめています。


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*つーかー さま 自己発信による成長のためのブログ!
*平野敦士カール さま 東大ハーバードで教えない年収3000万円超★オススメビジネス書アライアンス★