野村 泰伸: “フィジオームプロジェクトの課題”, 電学論C, Vol. 127, No. 10, pp.1491-1497 (2007) .
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フィジオームプロジェクトの課題について、野村 秦伸 先生の論文を読みましたので、紹介します。
【目次】
1.はじめに
2.生体構造・機能のデータベース化
3.生体機能の数理モデル
4.数理モデルと生体・生理実験データ
5.知識集約と産業戦略
6.おわりに
【注目ポイント】
◆フィジオーム(Physiome)
Physio; physiologyと、-ome; as a wholeをつなげた造語で、生体の生理機能の総体を意味する。
◆フィジオームプロジェクト
「生理機能の計測・解析データのデータベース化、生理機能の統合記述的、論理的、定量的モデル開発に向けた各国の協調的努力を通じて、フィジオームとは何かを定義することである」
つまり、「フィジオームとは何かをきちっと定義しよう」というのが、フィジオームプロジェクトですね。そこで、フィジオームを定義するために、まず、何を すべきかというと、膨大な生体生理機能情報を統合する方法を開発することです。このような方法を、戦略的に開発するためには、具体的な課題を通じて行うこ とが必要です。本論文には、3つの課題について提案されています。
1.生物学の情報を組織的に収集し、データベース化する方法を開発する
2.知識を集約する記述的・定量的モデルを構築し、知識の不足や矛盾点を洗い出す
3.特定の生理機能に焦点を絞り、統合生物学を研究する体制を世界レベルで組織化する
また、フィジオームプロジェクトにおける2つのキーワードが紹介されています。それは、生理機能の「データベース化」と「数理モデル」です。
一つ目の生理機能の「データベース化」とは、DNAの塩基配列や蛋白質の立体座標など”もの”の情報だけでなく、生体で起こっている生理機能、つまり”こ と”の情報も、データ化してデータベースを作ることを意味しているそうです。生理機能をデータ化するのは、現時点では難しそうですが、「それをどうやって 記述するか」というのも課題というわけですね。
二つ目の「数理モデル」とは、生理現象を時系列的に発現する機能としてとらえ、定式化す るということを意味しているそうです。生理現象の多くは、力学系モデルで普遍的に記述することができるそうです。数学モデルは、積分することによって時間 軸のダイナミクスを観察することが可能になりますね。数学モデルは数式なので、データ化しています。つまり、生理機能のデータベース構築が実現できるとい うことですね。
したがって、まず、データベース化が可能な形式で個別の生理現象を数理モデルで記述し、つぎに、それぞれの数理モデルを 対応づけることによって、複雑な生理現象の総体を構造化することが可能になるそうです。その結果、各個人の研究者は自分の興味ある生理現象について、数理 モデルをダウンロードし、数値パラメーターを調節して、独自のシミュレーションをすることも可能となります。
【参考文献】
(1)医学のあゆみ Vol. 205 No. 7 p.433 バーチャルヒューマン
(2)システムバイオロジー—生命をシステムとして理解する 北野 宏明
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