総説の書き方のポイントをまとめました。□ 包括的な内容で、多数の論文を要約する。
□ 刊行された論文を厳密に評価し、個々の論文からは得られない大局的で重要な結論を含める。
□ 研究論文より幅広く読まれるため読者層を想定する。
□ 解説的な文章を書く。
□ 深く、明確な考察に裏付けられた批評を展開しながら、自らの理論を体系的に構築する。
□ アウトラインを作成し、情報・議論を一貫させる。
□ 広く認められている論文のうち、著者の見解を指示するもの、指示しないものを熟知する。
□ 著者の見解と一致しない論文は、見解の不一致について考察する。
2010年4月20日火曜日
総説を書くときのチェックリスト
2010年3月9日火曜日
今日買った論文執筆本
■ 世界に通じる科学英語論文の書き方 執筆・投稿・査読・発表
論文の書き方、発表の仕方、レビューの書き方、CVの書き方など幅広い項目について説明されています。
ベストセラーのようですね。
2010年2月8日月曜日
大学生の文章力の低下
立松教授によると、山形大では最近5~6年で、答案やリポートに話し言葉を使ってしまう学生が目立つようになった。立松教授は「早急に学生のレベルを底上げする必要を感じた。できる学生とそうでない学生に開きがある」と危機感を抱いている。
セミナー週1回90分にわたって「主語と述語、修飾語と被修飾語は近づける」「話し言葉を持ち込まない」など初歩的な作文方法などを解説。リポートやディベート、情報収集の方法についても図で説明する。山形大:「文章のいろは」必修科目に
|毎日jp
文章力を向上させる一つのコツについて、久保博正さんはこう述べられています。
気に入った表現や言葉をメモしたり、模範となる文章のマネをして書いてみるのが近道なのです。(p. 48)
意識して訓練すれば、文章力はきっと伸びると思います。
2010年1月12日火曜日
文章を直してもらうときのちょっとした心構え
学位論文や文章を確認してもらう立場の方は、以下のことをぜひ心に留めて頂ければと思いました。
next49さんの『発声練習』というブログから引用します。
複数人に同時に論文指導を受けているとき、何人かから同じことを指摘されることがあると思う。で、既に別の人に指摘されているので「あっ、それ**さんにも、指摘されました」と思わず言ってしまうことがあると思うが、それは言ってもメリットがないので言うのを我慢すること。
理由は以下のとおり。
1. 「あっ、それ**さんにも、指摘されました」には、無意識に「それはもう知っているので説明を止めてください」が含まれてしまう。コミュニケーションにおいて「それは知っている」というのは会話を止めるマジックワード。
2. 「あっ、それ**さんにも、指摘されました」と言うことによって、「ああ、じゃあ、そこは飛ばすね」とその部分の説明を省かれる可能性がある。同じ箇所の指摘だけれども、指摘している理由が違うかも知れないのでちゃんと説明してもらったほうが得。
冷静になって、何のために見てもらっているのかを考えれば、この対応に納得できるはずです。
特に論文の校正は時間と労力が費やされるので、見てもらう側が見る側の立場にたって考えることが出来れば、お互いより充実した時間を共有できます。
また逆に、見る側も見てもらう側の立場を考える必要もあります。それについてはまた今度。
2009年12月25日金曜日
英語論文ははじめから英語で書くべきか?
おおまかな、あるいはかなり詳細な下書きを日本語で準備してから、英語にとりかかるべきだと思う。
不慣れな外国語で書くという作業が自然な思考を妨げる恐れがある。推敲の段階でも、外国語であるがゆえに論理的なおかしさや「わかりにくさ」に気付きにくい可能性がある。
マテメソとリザルトは直接英語で書き、ディスカッションは日本語の下書きを用意することが著者のお勧めです。
2009年12月22日火曜日
英語論文を早く読むコツ
0.アウトプット思考で読み、絶対に全文読まないこと(心がけ)
1.仮説思考で論点をクリアに(5分)
2.論点に対して情報になるところを探す。キーワードまたは各パラグラフの最初の一行だけ読む(10分)
3.めぼしをつけたところを読んで、情報を収集する(10-15分)
パラブラフの冒頭には通常、キーセンテンスが書かれています。このキーセンテンスをスキミングすることで、素早く全体像を把握しながら自分の読むべきところを探し出していきます。
また逆に考えると、キーセンテンスを意識して論文を書くことで、分かりやすい文章を書くことができます。
【参考図書】
■ 論理的な文章が自動的に書ける! 倉島 保美
2009年11月12日木曜日
論文執筆に使える表現
◆引用の後に意見を述べる表現
これは〜ということを明らかに表している
This clearly shows that ~
◆問題点の考察を始める表現
では、〜を詳しく検討しよう
I will now discuss ~ in detail
◆過去の研究の概要を述べる表現
〜に関するいくつかの研究がなされてきた
Several studies have been made on ~
◆研究に関心があることを述べる表現
〜についての関心が高まってきている
The concern with ~ have been growing
◆説明する表現
Aで論証されていることはBである
What has been demonstrated in A is B
【参考書】
英語論文 すぐに使える表現集 小田 麻里子, 味園 真紀 1999
的確な表現が論文を書くときに非常に参考になる。
2009年11月9日月曜日
EndNoteでの引用文献の削除
1.引用箇所を選んで、Edit citation(s)
複数引用の場合、一旦全部がcitation #に戻る。
2.取り除く文献を確認し、Remove
3.ツール > EndNote X1 > Format Bibliography
[EndNote]
使用環境
EndNote X1, Word 2004 mac
【参考図書】
■ 最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版
2009年10月29日木曜日
BiomedExperts
Directory of pre-computed research profiles in BiomedExperts
http://www.biomedexperts.com/BrowseAuthors0.aspx
研究者の情報を調べるのに便利。
Googleで"BiomedExperts and "検索する方が早い。
http://www.google.com/webhp?hl=en
2008年10月23日木曜日
【研究本】論理的な文章が自動的に書ける!
2008年6月30日月曜日
クリエイティブな論文を書く
クリエイティブな論文を書くには、50稿必要なのだそうです。2〜3稿でも結構しんどいですけど。もっと修行をしないといけませんね。まるでマラソンですね。
島岡先生のブログから引用します。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、質の高い論文や原稿を書くためのコツは、何回も書き直すことです。通常は初稿があがった時点で同僚や共同研究者に見 せてコメントをもらいたいところですが、ここではあえてそれを薦めません。というのは初稿は通常非常に陳腐なアイデアや表現が詰まっていることが多いから です。
・・・
初稿から第10稿程度までは「陳腐なアイデア」を出し尽くすための創造的破壊のプロセスです。その後、第30稿ぐらいになるとやっと面白いアイデアや切り 口、的を得た表現が生まれ始め、さらそれらを壊したり、成熟させたりして第50稿ぐらいで鑑賞に耐えうるような作品になるように思います。
第50稿(時には第100稿)までの過程はいわゆる”産みの苦しみ”をとともなう、時として非効率的で、過酷な精神修養ですが、これが『論文力』 をつける絶好のトレーニングであると考えます。この過程で常に人とディスカッションすることは必須ですが、クリティカルポイントである”後半1/3”に達 するまでは、原稿を人に渡すべきではありません。ハーバード大学医学部留学・独立日記:論文力のつけ方
【参考サイト】
* ハーバード大学医学部留学・独立日記:論文力のつけ方
2008年6月26日木曜日
【研究本】創造的論文の書き方
2008年6月3日火曜日
2008年5月11日日曜日
文章の書き方

今回は、nagaimichikoさんの『nagaimichikoの日記』から、文章の書き方についてまとめられた記事を引用します。ブログや論文などを書く時に参考になりそうです。
基本だけど最も大切なこと
・誤字、脱字がない
・人名、社名、サービス・商品名、日付、数値が正確
・不確かなことは書かない(コメントは言質をとる)(数字は要注意)
・思い込みや推測を書かない(書く場合はコラムで、責任を持って書く)
・一方的な宣伝とならないようにする
・確かな情報源からの情報でない場合は、2カ所以上から裏をとる
・感情的な表現は避ける(すごい、きれいなど)「うまい記事」とは?
・「へーっ」と思うポイントをつかんである記事(=意外性、新鮮な視点)
・ポイントを前面に押し出せていること(タイトル、冒頭に持ってくる、焦点を絞り込む)
・わかりやすい(難しい言葉を使わず、専門用語には解説を加える)
・読んだ後で、ひとつ賢くなった気がする(笑)
・キャッチーなタイトル内容
・過去からの流れを押さえる→背景・経緯を押さえることで理解が進む、「new」が引き立つ
・「なぜ今この発表・記事が必要か」を押さえる
・他媒体との差を意識するテクニック
・小見出しを工夫する(キャッチー、小見出しだけ読めば内容がわかる)
・語尾をいろいろ変える(だ、いる、なる、した、という、と語る、ようだ、体言止め)
・パラグラフ・1文は短く(読みやすさを出す)「記事は議事録とは違う」(BY 昔の上司)
・議事録:時系列に物事が並ぶ。重要度はつけない
・記事:重要な順に並べる。大事じゃない部分は省略可nagaimichikoの日記:4年前にまとめた「記事を書く際の注意事項」を公開してみる
【参考サイト】
(1)nagaimichikoの日記:4年前にまとめた「記事を書く際の注意事項」を公開してみる
2008年5月1日木曜日
横断検索サイト
翻訳に便利な、横断検索サイトをご紹介します。◆ Cross Translation
◆ 10の翻訳エンジンから一括翻訳 翻訳くらべ
◆ Google翻訳
Cross Translation
10の翻訳エンジンから一括翻訳 翻訳くらべ
Google翻訳
【バックリンク】
● メタ検索エンジン
2008年4月20日日曜日
トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボローム,フラクソームの統合による大腸菌の代謝解明

メタボローム—代謝研究の新潮流
代謝プロファイル,低酸素応答,タンパク質機能解析と肥満・炎症メカニズムの解明から食品開発まで
曽我 朋義 /企画
出版社:羊土社
発売日: 2007/12
*Amazon.co.jpで詳しく見る
トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボローム,フラクソームの統合による大腸菌の代謝解明
石井伸佳/曽我朋義/冨田 勝
今回は、石井先生の大腸菌を用いたマルチオミクス解析についてご紹介します。
【目次】
はじめに
1.Keio collectionの連続培養
2.マルチオミクス解析
3.代謝のロバスト性を実現するための大腸菌の戦略
おわりに
【注目ポイント】
はじめに
メタボローム研究において、最近進歩した技術の1つには「代謝フラックス解析」があるそうです。これによって、多数の代謝経路に含まれる代謝物が網羅的に測定できつつあるようです。
この代謝フラックス解析やマイクロアレイ、質量分析装置を使ったショットガン分析により、トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームの観察が可能となりました。しかし、単独のオーム階層(たとえば、遺伝子発現だけの網羅的解析など)の中だけでの解析で生体の状態を予測するのは必ずしも容易ではありません。私自身も、トランスクリプトームやプロテオーム解析を個別にそれぞれ研究してみてこのことが痛感させられます。
そこで、石井先生は、以下の問題意識のもと、複数のオミクス解析を行い、結果を統合することにより新たな知見を得ることに成功したそうです。その問題意識について、引用します。
各種の「オミクス解析」が試みられるようになってきたものの、得られた網羅的データから何らかの有意義な生物学的知識を獲得するのは必ずしも容易ではないことが次第に認識されてきた。その理由の1つとしては、単一の「オミクス解析」は、結局、細胞機能のある特定の階層に関するきわめて限定された情報を持つに過ぎず、細胞の活動全体を把握するには必ずしも十分ではないことがあげられる。
1.Keio collectionの連続培養
今回の解析には、中心炭素代謝系(解糖系・ペントースリン酸経路・クエン酸回路)遺伝子を欠損した大用金(K-12)24株を用いています。また、連続培養とは、一般的な閉鎖系の大腸菌培養とは異なり、大腸菌の代謝反応に必要な基質溶液を、連続的に培養液に送液すると同時に、一定流速で菌体液をサンプリングする方法です。このような大腸菌の定常状態での培養は、代謝フラックス解析にとって必要だそうです。これにより、一定条件で観察が可能になるからでしょう。
大腸菌への刺激は、内的刺激として遺伝子欠損を、外的刺激として基質の濃度変化を採用しています。
2.マルチオミクス解析
マルチオミクス解析に用いた方法
(1)Transcriptome:DNAマイクロアレイ法/定量PCR法
(2)Proteome: 二次元電気泳動法/液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法
(3)Metabolome:キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析法
(4)Fluxome:ガスクロマトグラフィー-質量分析法による同位体代謝物の分布解析
これらの測定結果は、web Escherichia coli Multi-omics Databaseで公開されています。
3.代謝のロバスト性を実現するための大腸菌の戦略
実験結果のポイント
(1)一遺伝子欠損株では、mRNA、蛋白質、代謝物質のいずれもあまり大きな変動はみられない。
(2)野生株では、mRNA、蛋白質は基質量の変化に追随して変動するが、代謝物質はあまり変化しない。
(1)の一遺伝子欠損のような内部変化に対して、大腸菌はそれほど大きな対応をとらないことが伺えます。マウスではノックアウトにより大きく表現系が変わる例もあり、種ごとに差があることを示している結果といえます。(もちろん大腸菌にも約7%の生存に必須といわれる遺伝子があるそうなので、欠損しても生理機能を維持できる遺伝子とそうでない遺伝子があることには変わりなさそうです。)
また、遺伝子が欠損しても代謝反応が維持されるのは、欠損遺伝子のアイソザイムによる代替や迂回経路などの形成によると考えられています。
以上の一遺伝子の欠損は代謝系に大きな影響を及ぼさないという結果は、生体がシステムとして機能している証明のひとつと考えられます。つまり、脆弱性を抑え、頑強性(ロバストネス)を獲得した大腸菌の生き残り戦略なのでしょう。
【語句説明】
*1:メタボロミクス
全代謝物質の網羅的測定を目的とする研究。ガスクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・キャピラリー電気泳動・フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴と質量分析装置を組み合わせた、GC-MS, LC-MS, CE-MS, FT-ICRMSや核磁気共鳴装置(NMR)などを用いて計測する。
*2:代謝フラックス解析(metabolic flux analysis)
安定同位体ラベル基質を用いて、幾何学的に複雑な代謝系の代謝フラックスを推定する方法。
*3:代謝フラックス
細胞や菌体内における物質の流れ。細胞内の化学反応の化学量論モデルと代謝物間の質量作用則から導かれる細胞内の代謝物の流速(フラックス)である。
*4:Keio collection
大腸菌K-12の全ての遺伝子の一欠損株のコレクション。大腸菌の遺伝子は4,400程度であることが明らかにされている。
【参考サイト】
Escherichia coli Multi-omics Database
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科 生体情報学 森 浩禎 教授 研究室
【参考文献】
Ishi N, Nakahigashi K, Baba T, Robert M, Soga T, Kanai A, Hirasawa T, Naba M, Hirai K, Hoque A, Ho PY, Kakazu Y, Sugawara K, Igarashi S, Harada S, Masuda T, Sugiyama N, Togashi T, Hasegawa M, Takai Y, Yugi K, Arakawa K, Iwata N, Toya Y, Nakayama Y, Nishioka T, Shimizu K, Mori H, Tomita M.
Multiple high throughput analyses monitor the response of E.coli to perturbations. Science, 2007. 316(5824): 593-597.
【参考記事】
◆システムバイオロジーにおける網羅的測定の必要性
『まずは 溶かして 混ぜてみよう!:システムバイオロジー part2』
2008年3月22日土曜日
転写ファクトリーのダイナミクス
ソニーコンピュータサイエンス研究所の北野 宏明 先生が、『システムバイオロジー』で説明されている通り、細胞内の現象をシステムとして捉えるときには、高精度かつ大規模な実験が必要です(1)。
DNA マイクロアレイ法は、遺伝子の測定法の一つです。本法は、オリゴヌクレオチドを高密度に基盤に搭載することにより、RNAの量を網羅的に定量することが可 能です。したがって、システムバイオロジーでは、マイクロアレイ法を利用して、遺伝子発現データからの知識抽出を行う研究が数多く行われています。
今回紹介するテーマは遺伝子発現です。最近開発されたタイリングアレイをつかうと、転写されているRNAをほとんどリアルタイムで正確に測定できつつあります。これを使って、RNAの転写のメカニズムに迫ります。
まず、転写反応の背景を簡単に説明します。これまで、DNAの転写(遺伝子発現)の素過程は以下のように考えられていました(2)。
1.RNAポリメラーゼIIを含む転写因子複合体がDNAに結合する。
2.転写酵素(RNAポリメラーゼII)がRNAを合成しながらDNA上を移動する。
3.転写終点でのDNAからの転写酵素複合体の解離
つまり、転写酵素複合体を編成電車に例えて、おおざっぱなイメージとして表現すると・・・
『電車が一つ一つ連結しながら、線路の上におりてきて、終点でまた、ばらばらになりながら飛んでいく。』
という感じでしょうね。
しかし、今回ご紹介する実験結果では、転写ファクトリーと呼ばれる転写因子複合体が、核の中で固定されていてDNAが読まれていくと考えられます。
少し古いたとえですが、
『白黒映画に出てくるような紙の暗号を読む解読機』
という感じでしょうか?
では、東大先端研の児玉 龍彦 先生の『転写ファクトリーのダイナミクス』についてご紹介します。非常に興味深いので、個人的に大好きな研究のひとつです。
医学のあゆみ 2007年 11・12号 223 (11•12)
■Quantitative Biology −定量的生物学
*Fujisan.co.jpで詳しく見る
転写ファクトリーのダイナミクス
児玉 龍彦
【目次】
・遺伝子発現は厳密に制御されている
・染色体上の転写を観測する
・転写は数サイクルの波としておこる
・計量生物学からつくられる転写ファクトリーのモデル
・第二サイクル以降の転写の謎
・癌細胞の染色体転座と転写ファクトリー
【注目したポイント】
・遺伝子発現は厳密に制御されている
ヒト細胞の不思議のひとつは、どのようにして分子レベルのミクロ情報が細胞の動きや個体の動きというマクロな動態を制御していくか、という点にある。
フィジオーム(オミックスペース)はしばしば階層構造として説明されます。筆者が言うように、下層に位置するDNAやRNAから生体機能への上向的因果性はよく知られていますがてこの原理でいうと、私も小さい方に興味がすごくあります(5)。
今回の実験の転写反応のきっかけは、TNFα(炎症性サイトカイン)です。この1つのサイトカインをヒト血管内皮細胞に処理するだけで、500以上の遺伝子が順次転写されていくそうです。時系列の精密な転写誘導は、「オーケストレーション」と呼ばれているそうです。
・染色体上の転写を観測する
これまでの転写反応の背景は、先述のとおりです。その一方で、実際にはヒトの細胞でmRNAは転写とともにスプライシングなどが起こることが知られていました。しかし、その詳細な観測は技術的に困難だったそうです。
そこで、筆者は染色体上の配列を13塩基ごとに測定できるタイリングアレイを利用して、7.5分という短い時間間隔でRNAの合成過程を精密に測定することにしました。
・転写は数サイクルの波としておこる
一般的に、RNAの転写のスピードは3,000塩基/分であることから、100 kb以上の遺伝子であれば30分以上かかって転写されますね。そこで、7.5分間隔にすることにより、4点以上でスナップショット的にRNAの量を観察す ることが可能になるそうです。(個人的にはこのきっちりした戦術の組まれ方に感動してしまいます。)
そこで、486 kb以上あるZFPM2遺伝子のRNAの発現量を、TNFα処理して3時間後まで観察すると、DNA上の各配列が、順番に転写されていく様子が観察出来て います。(理論的には、ZFPM2は約160分で全長が転写されるはずである。実際のデータは180分までであり、きれいなひと波になっている。)
さらに、イントロンRNAのin situハイブリダイゼーションや質量分析によるコピー数測定の結果をあわせると、1個の転写ファクトリーでは20個のRNAが一度に作られている計算に なるそうです。また、1つの遺伝子については、2箇所のイントロンが一個の細胞の中で、同時に転写されることはないそうです。(一分子測定は、とても説得 力があります。)これは、ゲノムが固定されていて、転写酵素複合体が近づいてくる従来のモデルで考えると、1つのプロモーターにつぎつぎ転写酵素複合体が 結合すれば、複数のイントロンが同時に転写されるはずであるので、この理論では説明できない現象ですね。
・計量生物学からつくられる転写ファクトリーのモデル
以上の計測結果から考えられる新しい転写モデルは、「核内に存在する転写ファクトリーにDNAが引き込まれ、20個程度のポリメラーゼが転写反応を進めている」ということになります。論文内ではさらにDNAのねじれをただす機構についても興味深い考察がされています。
・第二サイクル以降の転写の謎
引き続き、転写を観察すると第2波以降は、第1波の転写パターンほど秩序だった転写の移動が見られないそうです。なぜこのようなことが起こるのかは、現時 点では謎ですが、クロマチンコンフォーメーションキャプチャー法という技術で、DNAを三次元的に観察することで明らかになるかもしれません。
・癌細胞の染色体転座と転写ファクトリー
さらに、癌細胞における染色体の転座にも転写ファクトリーが重要であるという知見が得られているそうです。
【参考書籍】
(1)システムバイオロジーにおけるインフラストラクチャー(基盤環境)について
システムバイオロジー—生命をシステムとして理解する
北野 宏明
303ページ
出版社:秀潤社
ISBN:9784879622402
発売日: 2001/06
*Amazon.co.jpで詳しく見る
(2)遺伝子発現の素過程について
遺伝子発現—ジーンセレクターから生命現象へ
堀越 正美
521ページ
出版社:中外医学社
ISBN:9784498008403
発売日: 2002/05
*Amazon.co.jpで詳しく見る
(3)転写ファクトリーの確率論的形成について
細胞核構造と機能のストカスティックな制御
木村 宏
生物物理43(5), 234-239(2003)
*J-STAGEで詳しく見る
日本生物物理学会
(4)転写ファクトリーと核内構造(木村 宏)「固定」された転写ファクトリー
転写がわかる 基本転写から発生,再生,先端医療まで
半田 宏
128ページ
出版社:羊土社
ISBN:9784897069944
発売日: 2002/10
*Amazon.co.jpで詳しく見る
(5)上向的因果性(階層的自己組織化)
生命-進化する分子ネットワーク—システム進化生物学入門
田中 博
263ページ
出版社:パーソナルメディア
ISBN:9784893622037
発売日: 2007/07
*Amazon.co.jpで詳しく見る
2008年3月20日木曜日
コンピュータの中の脳—情報基盤の進化論—
生体の科学 2008年 02月号 59 (1)
■特集 コンピュータと脳
*Amazon.co.jpで詳しく見る
*Fujisan.co.jpで詳しく見る
今回は、理化学研究所の豊田 哲郎 先生のオミックス進化論についてご紹介します。
【目次】
1.オミックス進化論
2.環境を進化させる”人間の脳”
3.社会を進化させる”共有の脳”
4.依存の表明
5.オミックススペース
6.セマンティックウェブ
7.オントロジーと現象学
8.ライフサイエンス統合データベース
9.スーパーブレイン
【注目したポイント】
1.オミックス進化論
オミックスとは、生体の持つ分子情報(DNA, RNA, proteinなど)を網羅的に観察して分析する研究のことです。これまで生命は、38億年かけて進化してきました。また、システムバイオロジーは、生命 をシステムとして理解することを目的としています。したがって、生命の進化は、システム(分子ネットワーク)の進化ととらえることができます。この ようなシステムの進化は、単独で進化している訳ではなく、生命の進化・社会の進化・経済の進化などと『共進化』しているそうです。オミックス研究の発展に より、生命の情報化がますます加速すると考えられます。本論文では、データベース化された情報の価値判断を行う『スーパーブレイン』について紹介されてい ます。
2.環境を進化させる”人間の脳”
オミックス進化 論では、「自然選択がはたらく物質世界と、経済選択がはたらく情報世界とを輪廻することで、エリート遺伝子の最適な組み合わせが選び出される」という新し い進化モデルが提唱されていることを示されています。経済選択とは、遺伝子が人間社会に有益かどうかで選択されることだそうです。その判断には、遺伝子に 関する膨大な情報分析が必要ですが、コピュータを使うことで、この分析速度が向上します。したがって、『生命と人工知能の間に共進化がみられるようにな る』と予測されているそうです。
生命が、環境に選ばれる存在から、環境を選ぶ存在へ移り変わることを説明した本文を引用します。
遺伝子を中心に据えた進化論では、「自然選択」が進化を生み出す原理であり、環境に個体を選ばせることで、環境により適した遺伝子を子孫に残していったとされる。
進化がある程度進むと、生命は環境に選ばれる存在から環境を選ぶ存在へと進化し、そのために神経系を発達させ、移動や選択を可能にした。そして、進化がさらに進むと、自らを進化させるよりも逆に環境を都合よく進化させる方が、個体の生存により有利に働いた。
つまり、人類が生物のトップになるために、自らの脳を進化させ、これからは、複雑系を理解するために、人工知能を進化させようとしているということですね。
3.社会を進化させる”共有の脳”
20 世紀後半から始まった、コンピュータの発明による情報革命により、人間が行う暗記や計算などの労力は激減しました。しかしながら、大量な情報を機械と人間 の間に流通させることは困難であるため、コンピュータの中に脳が必要になったそうです。また、個人の頭の中にあるノウハウをコンピュータに移し、知識ネッ トワークを共同で構築することが、情報社会において、お互いの利益になると考えられています。
4.依存の表明
『依存の表明』とは、共有された情報などの引用のことを意味していて、依存度合いが、その情報の重要性を測る指標になってきているそうです。また、依存価 値の高い共有情報は、多くの優秀な人間によって複製と改変と経済選択が継続されるため、生物の進化と似た現象がみられると説明されています。Google の検索で、上位にあるほど有用であるのと同じですね。このように、人間は実社会で活用するために、コンピュータ上にある情報を、改良しながら使っているこ とから、物質世界と情報世界のネットワークが共進化するようになったそうです。
5.オミックススペース
オミックスペースとは、オミックベクトルの集合空間であり、 オミックベクトルとは、オミックス研究により得られる網羅的なベクトルデータのことだそうです。では、ベクトルデータとは何でしょうか?『ベクトルデータ とは、点、線、面で構成される図形要素を座標値(XY座標)として管理しているデータ。』ということだそうです。オミックスペースは、理研ニュースの「図 1 オミックスペースの概念」が分かりやすいですね。
6.セマンティックウェブ
セマンティックウェブとは、Webページの内容の意味がコンピュータに理解できるようにする構想のことです。この構想は、ワールドワイドウェブにおけるリ ンクには、コンピュータに可読な情報が含まれていないという問題から生まれたそうです。セマンティックウェブが実現すると、ネットワーク上の膨大なリソー ス間のリンクがコンピュータにより読み込まれます。これによって、従来人手で理解していたリンクがコンピュータで処理され、自由に取り出せるようになるそ うです。このように、コンピュータに可読な情報を付加するためには、Web上でコンピューターがデータ交換するのに適した文章記述言語が必要になります。 そこで、XML(Extensible Markup Language)やRDF(Resource Description Framework)という言語が開発されたそうです。ただし、ライフサイエンス分野においては、生理現象における因果関係が逐次報告されるため、個々の 因果関係を”現象の連鎖”として捉え直す必要がある(つまりリング情報を解釈し、並び替える必要がある)と説明されています。また、因果関係が分岐する場 合も考えられるので、ますます複雑になりそうです。
7.オントロジーと現象学
オントロジーとは、哲学用語で「存在論」という意味ですが、知識表現の分野では『対象とする世界に存在するものごとの体系的な分類と、その関係を明示的・形式的に記述する』という意味で、用いられているそうです。
現象学とは、『人間の意識の中に認識が確立されていく過程を分析する学問』だそうです。例えば、人とコミュニケーションしていて、認識の違いが発生した場 合、それぞれの判断のもとになった原体験を一緒に振り返り、両者の認識を一致させる方向に導くものです。前述のセマンティックウェブで問題となった、次々 と報告される個々の因果関係を”現象の連鎖”として捉え直すときに、現象学的還元が伴うそうです。
では、現象学的還元とは何でしょうか?YagiYuki さんの『現象学Memo:現象学的還元とは? [フッサール現象学]』を引用してみます。
【経験思考の破棄】
我々の思考は経験の蓄積により様々な考えが既に織り込まれています。基本的に全ての人がこの織り込まれ、蓄積された考え(経験的確信、経験的理論)を基準にして物事を判断しています。しかし、「その前提から学問を哲学を出発して本当にいいのか?」ということが問題になる。我々はただ単に経験しているだけであり、経験から思考した場合、その前提となる経験的思考に問題があれば、そこからどこまで考えていってもその思考は全て問題となる。誤った出発点からは、誤った結論しか出てこない。
【元へ還る】
現象学的還元は文字通り、「現象学的に」「元へ還る」わけです。例えば、物が目の前にあるとしても、「物を見ているという意識が働いている」と「意識の働き」の元へ還るわけです。「元へ還る」には「働き」そのものへと目差しを向け変え(反省)、全てが起こっている働きの現場(超越論的主観)を直視し、それ以外の「客観構成されたもの」「蓄積された概念」を全て判断保留(エポケー)します。そうすると全ての事態(事象)はこの現場にあるというのが、よく考慮すると見えてくるはずです。
【意識の本質構造を解明する】
「世界」も「事物」も「他者」も、そして「私」も「私の存在」も、全て「○○についての意識」であり「私の意識の働きによる現れ」でしかない。ならば「意識の働きに還元できる」のであり「意識の働きの本質構造を解明すれば、全ては解かれうる」ということです。自然な態度では隠れている「意識の働き」と対峙するのが「現象学的還元(超越論的還元)」という態度変更であり、その還元により全ては、超越論的主観の世界として描かれ、どこまで客観性を高めようとそれは経験、間主観性としての確信の世界であることが顕わになる。
意識の働きを自我のベクトルのようなものだとすると、自然な態度では、我々はベクトルによって生み出された「結果」をそのまま(疑いなく)受けとっている。しかし、「結果」だけを見るのではなく、ベクトルがどういう風に働いてその結果が生み出されているのかを洞察する。「ベクトル-結果」という構図があるとすると、結果を「一切前提せず」、つまり世界や事物や私の身体や私や価値という「結果」を何も前提せず、ベクトルの方から洞察していき、その末にどう「世界や事物などの結果」が構成され、信憑されているかという構図を明らかにする。
現象学的還元の詳細は、現時点で は理解できていません。しかし、「ある経験(既存の知見)に基づいて思考する前に、その経験の前提思考を辿れ」ということは、つまり、個々の因果関係の再 構築ということだと考えました。生命科学の情報整理には、この現象学的還元が容易に出来るシステム設計が必要なのだそうです。これを目指したのがSWF (Semantic Web Folders)で、ここではリンク自体もフォルダが設けられ、リンクにリンクを張る(メタリンクとでもいうのでしょうか?)ことも出来るようになるそう です。
8.ライフサイエンス統合データベース
今後「理研総合データベース」をハブとして、SWFが作成され、これによって、複数の人々がウェブ上で多様なデータベースを共同構築し、セマンティックウェブで公開できるようになるそうです。
9.スーパーブレイン
増加し続ける情報はデータベース化され、クローラーと呼ばれるデータ収集ロボットにより統合解析された後に、スーパーコンピュータによりネットワーク化さ れる。そのネットワークをスーパーブレインが判断して、人間にアウトプットされる。つまり情報の読み手が、人から機械に移り変わるため、機械可読な形式で 情報を発信することになるそうです。
【参考サイト】
2008年3月17日月曜日
フィジオームプロジェクトの課題
野村 泰伸: “フィジオームプロジェクトの課題”, 電学論C, Vol. 127, No. 10, pp.1491-1497 (2007) .
*J-STAGEで詳しく見る
フィジオームプロジェクトの課題について、野村 秦伸 先生の論文を読みましたので、紹介します。
【目次】
1.はじめに
2.生体構造・機能のデータベース化
3.生体機能の数理モデル
4.数理モデルと生体・生理実験データ
5.知識集約と産業戦略
6.おわりに
【注目ポイント】
◆フィジオーム(Physiome)
Physio; physiologyと、-ome; as a wholeをつなげた造語で、生体の生理機能の総体を意味する。
◆フィジオームプロジェクト
「生理機能の計測・解析データのデータベース化、生理機能の統合記述的、論理的、定量的モデル開発に向けた各国の協調的努力を通じて、フィジオームとは何かを定義することである」
つまり、「フィジオームとは何かをきちっと定義しよう」というのが、フィジオームプロジェクトですね。そこで、フィジオームを定義するために、まず、何を すべきかというと、膨大な生体生理機能情報を統合する方法を開発することです。このような方法を、戦略的に開発するためには、具体的な課題を通じて行うこ とが必要です。本論文には、3つの課題について提案されています。
1.生物学の情報を組織的に収集し、データベース化する方法を開発する
2.知識を集約する記述的・定量的モデルを構築し、知識の不足や矛盾点を洗い出す
3.特定の生理機能に焦点を絞り、統合生物学を研究する体制を世界レベルで組織化する
また、フィジオームプロジェクトにおける2つのキーワードが紹介されています。それは、生理機能の「データベース化」と「数理モデル」です。
一つ目の生理機能の「データベース化」とは、DNAの塩基配列や蛋白質の立体座標など”もの”の情報だけでなく、生体で起こっている生理機能、つまり”こ と”の情報も、データ化してデータベースを作ることを意味しているそうです。生理機能をデータ化するのは、現時点では難しそうですが、「それをどうやって 記述するか」というのも課題というわけですね。
二つ目の「数理モデル」とは、生理現象を時系列的に発現する機能としてとらえ、定式化す るということを意味しているそうです。生理現象の多くは、力学系モデルで普遍的に記述することができるそうです。数学モデルは、積分することによって時間 軸のダイナミクスを観察することが可能になりますね。数学モデルは数式なので、データ化しています。つまり、生理機能のデータベース構築が実現できるとい うことですね。
したがって、まず、データベース化が可能な形式で個別の生理現象を数理モデルで記述し、つぎに、それぞれの数理モデルを 対応づけることによって、複雑な生理現象の総体を構造化することが可能になるそうです。その結果、各個人の研究者は自分の興味ある生理現象について、数理 モデルをダウンロードし、数値パラメーターを調節して、独自のシミュレーションをすることも可能となります。
【参考文献】
(1)医学のあゆみ Vol. 205 No. 7 p.433 バーチャルヒューマン
(2)システムバイオロジー—生命をシステムとして理解する 北野 宏明
*このブログで詳しく見る
2008年2月29日金曜日
論文執筆の葛藤
尊敬している大隅先生(東北大学)のブログからです。
大隅典子の仙台通信:無事投稿 2008年 02月 28日
研究者というものは論文書いてナンボだと思っています。とっても共感できます。『早く投稿したい』のと、『もっとデータが出そう』な状況は、よくぶつかります。
(学者なら本を書いてナンボですね)
私たちの分野(発生生物学、神経発生学、神経生物学等)では、若い人なら年に1本書ければ職があると思うのですが、この「書く」ことが案外難しいのです。
というのは、論文は基本的に「外圧がない」ので、本人が「書きたい!」という気持ちが強いか、ボスが「書きなさい」というプレッシャーを与えるか、がないと、ずるずるとどこまでも、どこまでも、何も書かなくても月が過ぎ、年が過ぎしてしまうのですね。
学位論文を出すときには、本人も周囲も「なんとかしなくては」という意識が強いのですが、それを過ぎると、「まだこのデータが足りない」「このデータが出 たら書こう」「先日の学会で、誰某さんからこうこう言われたから、そのデータを取ってみよう」などなど、いろいろな理由によって論文を書くのが後回しにな ります。
悩ましいですね。
でも、いい仕事をするのが一番だと、思います。


