2010年3月8日月曜日

生化学実験とムダの話

今日は、東京都健康長寿医療センター研究所、研究部長の遠藤玉夫先生の記事をご紹介します。

私も論文にならない沢山の実験をするタイプです。この文章を読んで、背中を押された感じがしました。


 さて生化学実験とムダの話である。私も若い頃徹夜実験を組み、朝結果を得てムダな実験だった、と何度思ったことであろうか。また、学生同士や助手の先生と話しをして、そんなのやってもムダだ、と言われながら、ムダと思いつつ行なった記憶も多々ある。しかしこれはムダと呼ぶべきものではなく、確かにこういうことはない、ということを実証したと考えるべきではないだろうか。これまで自分は、好奇心を持って好きなことに挑戦し続けてきた。その間には相当ムダな実験も行なって来た。これは単に自分の頭が悪いだけで、実験をやってみなければ分からなかっただけのことかも知れない。確かに論文に実際使用したデータに関する実験だけをやれば最短で結論に達することができたはずである。しかし、出発点から目的地まで地面を歩く時、足跡だけの地面があれば歩くことが可能だろうか。おそらく答えは「否」である。「こういうことではない」という結果を自らの手で得ることこそ研究者にとって大変大事なことである。傍らから見ると一見ムダに見えるかもしれないが、若い皆さんには勇気をもってムダな実験を行なってほしい(指導教官にとっては金銭的に大変辛いだろうが)。

生化学 第82巻 第1号 p. 1 2010


『出発点から目的地まで地面を歩く時、足跡だけの地面があれば歩くことが可能だろうか。おそらく答えは「否」である。』

がとても共感できる一文でした。

河原の水面に見えている石の上を歩いて渡るような状況です。

私にとって、ムダだった実験は、うまくいかないことを証明すると同時に、集中力や技術の鍛錬になったことは間違いありません。

その一方で、声高に「ムダな実験はするな」とおっしゃる方がいるのも事実ですが…。

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