2008年5月10日土曜日

第47回生体医工学会大会に出席しました



 先日、神戸で開催された第47回生体医工学会大会に行ってきました。興味深かった演題をご紹介します。

《1.シンポジウム1「医工連携における人材育成」》

■橋本 成広 医工学系学部における教育

 大阪工業大学医工学研究センターの橋本 成広 先生は、センターの教育・広報への取り組みについて紹介されていました。まず、教育としては、アーリーエクスポージャー(early exposure)として、実習室と研究室を隣接させ、短期間学生を研究室に配属し、興味をもたせる試みがなされていました。また、広報としては、入学前・入学後のガイダンス、父母説明会など精力的に行われているそうです。講演を聴くだけで、大変な努力がひしひしと伝わってきました。しかし、確実にその成果として、医工学を個人単位で誘導した優れた人材が育ちつつあるようでした。

 講演中、印象的だったのは、就職活動における、「結局専門は、医か?工か?と聞かれて学生は困ってしまう」というの面接官のコメントでした。これはやはり、両方を満遍なく学ぶ必要性が浸透していないためだろうと推測します。また、企業側もこのような人材を今後、どう活かすか?を考える必要があると思います。ただし、卒業生は管理職に向くとのことで、就職率は良さそうな印象を持ちました。今後のキャリアパスがどうなるのか興味深いです。

■山口 隆美 医工連携における人材教育?医療工学技術者創成のための再教育(REDEEM)5年間の経験を通じて考える

 東北大学の山口先生は、いつもながら歯に衣を着せぬスタイルで、会場からは時々笑いが起こっていました。とてもパワフルで、個人的に尊敬している先生のひとりです。

 医者とエンジニアが対等な立場で、ともに歩むべきであることを強調されていました。

 印象に残った一言は、「教える側も再教育を受けるべき」ということでした。これは私自身も日頃注意していることでもあります。というのは、過去にインプットした知識のみで、教育し続けていると、内容のクオリティーが向上しないからです。ただ、このように考える教員は少なく、逆に反発されるとのことでした。私自身も、こういった経験があるので「やっぱりそうなのか!」と深く納得してしまいました。

 あと、インパクトがあったのは、ブタの解剖実習をされているそうで、山口先生自身も、手術着をきて解剖されているところを紹介されていました。

 東北大学まで行くのは少し遠いですが、REDEEMは一度受けてみたいですね。
 
《2.シンポジウム5 「フィジオーム・システムバイオロジーの基盤と展開」》

■中尾 光之 階層的生体システムのモデリングについて

 中尾先生は、概日リズムを生体レベルと分子レベルの両側面からの解析結果を紹介されていました。先生が強調されていたことは、分子→生体へのボトムアップ型と、生体→分子へのトップダウン型の両方の研究を進める必要性があり、実際両方の研究成果を説明されていました。分子からは、概日リズムに関わる遺伝子ネットワークからを単純化してモデル化し、細胞実験との整合性を確認していました。生体からは、睡眠実験より、時間感覚の狂いを観察することにより、CNS(視交叉上核:概日リズムの中枢として知られている)と末梢の制御関係を明らかにしていました。今後は、両者の擦り合わせが課題となるとのことでした。


*記事を書いていると、要素還元論とシステムバイオロジーについて、考えてしまいました。また、あらためて記事にします。

【関連記事】

(1)まずは 溶かして 混ぜてみよう!:第47回生体医工学会大会が開催されます

(2)まずは 溶かして 混ぜてみよう!:脳と遺伝子の生物時計

(3)まずは 溶かして 混ぜてみよう!:システムバイオロジー

【参考サイト】

(1)社団法人 日本生体医工学会

(2)大阪工業大学 医工学研究センター

(3)東北大学 REDEEM プロジェクト

(4)大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター

(5)東北大学 大学院情報科学研究科 中尾研究室 (バイオモデリング論分野)

(6)ウィキペディア(Wikipedia):還元主義

(7)教授 児玉 龍彦 | 東京大学 先端科学技術研究センター


IUPS2009 poster 国際生理学会が京都で開催されます

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