2008年5月31日土曜日

Life Sciences Career Day in IPRに参加しました

 5月30日(金)に大阪大学蛋白質研究所で院生の会の主催で行われた「Life Sciences Career Day in IPR」に参加してきましたので、開催内容をご紹介します。

 生物科学において多方面で活躍されている企業研究者や大学研究者のこれまでの進路や、日常生活、心の持ちようなど、興味深いお話が聞けた貴重な一日でした。


【プログラム】

田中 良和(サントリー植物科学研究所所長)
  『民間企業における研究開発と研究者の一例』

小根山 千歳(大阪大学微生物病研究所助教)
  『自分らしく駆ける』

小西 典子(武田薬品工業株式会社)
  『苦あれば楽ありの創薬研究と子育て』

白楽ロックビル(お茶の水女子大学教授 作家)
  『概念から放たれ現実を直視せよ!』


【注目のポイント】

《1.民間企業における研究開発と研究者の一例 田中 良和 氏》

 サントリーの “青いバラ” の開発者である田中さんは、4年間もの間、オーストラリアで青色遺伝子の取得に打ち込まれたそうです。『Blue Rose』とは、英語で不可能という意味があるそうです。その意味の通り、“青いバラ”の開発には多大な困難と苦労があったようです。

 このような困難を乗り越えてこられた田中さんの講演には、随所に心に響く一言がありました。

『強い者や賢い者が生き残るのではない。変化できる者が生き残るのだ。』ダーウィン

『何事も簡単にできるものは少ない。しかし、やってできないこともまた少ない。』

『賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず。』

『やってみなはれ!』

 また、成功のポイントを4つほど挙げられていました。

   *前向きなチャレンジ精神
   *出来ない理由を考えない
   *コミュニケーション力
   *協調性

 田中さんの印象は、自分の世界観を大切にしていらっしゃるようで、ユニークな良い方でした。


《2.概念から放たれ現実を直視せよ! 白楽ロックビル 氏》

 冒頭で、フロストの詩を紹介されていました。講演を最後まで聞いていると、『森の中で、道が2つに分かれていて、人があまり通っていない道を選んだ そのためにどんなに大きな違いができたことか』という詩の通りの人生を、白楽先生は歩んできたように思いました。また、タイトルの『概念から放たれ現実を直視せよ』には、過去の体験(特に成功体験)にとらわれずに、人生の目標をもって、常に新しい道を歩むべきだというメッセージが込められていました。(とても好きな詩なので、後ほど引用しておきます)

 途中、白楽先生は、院生の成功するための3つのポイントと、研究キャリアで成功するための5つのポイントを挙げられていました。

<院生の成功するための3つのポイント>

 1.滞空時間を長くする
 2.論文を出版する
 3.指導教員との関わりを持つ

 滞空時間とは、研究に費やす時間のことです。

<研究キャリアで成功するための5つのポイント>

 1.流行後20年の領域は、職が少ない
 2.好きな研究より、自分を活かせる研究を
 3.同年代より、中高年に好かれる
 4.独創的な研究は、30歳くらいと、40歳くらい
 5.独創性は、1歩先より0.2歩先

 “好きだから”だけでは、発展性に乏しいということでしょうね。 島岡 要先生のブロブ記事『好きなことを仕事にすべきか (revisit)』を思い出しながら、お話をきいていました。また、ノーベル賞受賞者の研究は、30歳くらいと、40歳くらいに始めた研究が多いそうです。独創性は、一歩先だと理解してもらえないそうです。(笑)

 後半では、バイオ博士号取得者についてのキャリアパスについて言及されていました。我が国での最近の著しい博士号取得者の就職率の低下に関する統計データを示されました。国家政策としては、明確な方向性は決まっていないようですが、白楽先生は自分で切り開くことの大切さを、冒頭の詩と先生自身の人生になぞらえて語られていました。

 お会いした印象としては、落ち着いたたたずまいの穏やかそうな先生でした。


【参考記事】

■ デキる大学院生になろう!
 ことを記事にしています。

■ 【研究本】大学院生のためのアタマの使い方
 企業に入って活躍できる人材になるために考えるべきことが書かれています。

■ 学生のうちにしておくべきこと
 学部生・大学院生の時にしか、できないことをまとめて、記事にしています。

■ キャリア・アドバイス
 働くことにおいて、心構えについて書いています。

■ ポスドク問題
 最近報道されている、ポスドク問題について記事にしています。

■ 【研究本】理系のための研究生活ガイド
 研究を始める学生に向けて書かれた本の紹介です。

【参考書籍】

(1)科学研究者になるための不肖・ハクラク進路ナビ―学生時代からの賢い進路選択で優れたバイオ研究者になる!

白楽ロックビル

2004


(2)グリンネルの研究成功マニュアル―科学研究のとらえ方と研究者になるための指針

フレデリック グリンネル

1998

(3)博士号とる?とらない?徹底大検証!―あなたが選ぶバイオ研究人生

白楽ロックビル

2000


【ロバート フロストの詩】

道が二本森の中に続いていた。

「歩む者のない道(選ばれざる道)」

黄色い森の中で道が二つに分かれていた

残念だが両方の道を進むわけにはいかない

一人で旅する私は、長い間そこにたたずみ

一方の道の先を見透かそうとした

その先は折れ、草むらの中に消えている


それから、もう一方の道を歩み始めた

一見同じようだがこちらの方がよさそうだ

なぜならこちらは草ぼうぼうで

誰かが通るのを待っていたから

本当は二つとも同じようなものだったけれど


あの朝、二つの道は同じように見えた

枯葉の上には足跡一つ見えなかった

あっちの道はまたの機会にしよう!

でも、道が先へ先へとつながることを知る私は

再び同じ道に戻ってくることはないだろうと思っていた


いま深いためいきとともに私はこれを告げる

ずっとずっと昔

森の中で道が二つに分かれていた。そして私は・・・

そして私は人があまり通っていない道を選んだ

そのためにどんなに大きな違いができたことか



【バックリンク】

● 【ひとこと】選難楽
● 【ひとこと】人の行く裏に道あり花の山

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