2008年4月26日土曜日

ポスドク問題

 stochinaiさんのブログのエントリ『5号館のつぶやき: ポスドク問題は終わったのかもしれない』を読みました。今回は、ポスドク問題についてご紹介します。

 まず、ポスドク問題とは何でしょうか?フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を引用しておきます。

旧文部省の旗振りで始まった大学院重点化計画によって大学院の定員が増え、その結果博士号取得者が増加した。そして増加した博士号取得者の職を補う形として、科学技術基本計画の一部であるポストドクター等一万人支援計画(ポスドク一万人計画)が実施されポスドクの人数は増加した。しかしながら、ポスドクを経験した博士号取得者の行き先として考えられる大学・研究所の定員は増えていない。このことはポスドク問題と呼ばれる。

ここで、出てくるポスドクとは、博士号を取得してから任期付きの研究員などの職を意味しています。簡単にいうと、ポスドク問題とは、常勤職に就けなくなった博士が溢れてしまい、せっかくの人材を活かしきれないという問題を指します。これは、日本の科学研究の推進に関わる重要な問題として認識されています。
 実際、知り合いの学生さんは、学位取得を希望していましたが、ポスドク問題の一連の経緯を考慮した上で、修士を卒業して就職してしまいました。

 それでは、続いて『5号館のつぶやき: ポスドク問題は終わったのかもしれない』を引用します。

 もちろん解決はしていないのですが、「ポスドク問題」が問題として取り上げられることが終わりつつあることを感じています。

 その最大の理由は、大学院の博士(後期)課程に進学する学生が、定員を割っているということです。これは、ポスドク問題あるいは博士の就職難問題に対し て政府が何もやらないあるいは何もできないことを認識した学生が、進学を拒否しているということです。この状態が続くと、10年後くらいにはポスドク問題 は(現在ある問題が何も解決しないまま)自然消滅してしまう可能性が高いと思います。

・・(中略)・・

 ポスドク問題が終わりつつあることを感じるもうひとつの理由は、ポスドクを含む当事者である大学院生や若い科学者達が、自分たちで動き出したことです。

 昨日は、早稲田大学で小飼弾さんを招いてPh.D.交流会があったそうです。

 政府の動きが緩慢なのは、事実でしょう。しかし、大学側もポスドク問題の解決に向けて活動しているようです。実際大学にも、専属の教員を雇用してポスドクの キャリアを支援している部局があるそうです。具体的には、アンケートやヒアリングなどによるポスドクの実情把握や、キャリア相談、ポスドクを経験した社会人を招いた講演会などを行っています。私自身もポスドク経験者として、この問題に協力したいと考えています。

 最後に、早稲田大学で開かれたPh.D.交流会での、小飼弾さんの講演内容をSasaki Takanoriさんの『Sasaki Takanori Online:Ph.D.交流会 with dankogai』から引用します。

弾さん的には

「博士100人の周りには、学も金も職も無い奴が何万といるわけで、そっちを救う方が大事」
「博士まで進むような連中は、”8人”になるリスクがあることを分かった上で自己責任でがんばれ」

ということだそうです。まあ言われてみればその通りですね。このあたりはまた「若者と仕事」問題において、あらためて考えていきたいと思います。


 『自己責任で頑張れ』に深く頷いてしまいました。研究のという職業にとらわれなくても良いのではないか、自分の得意とする技術を活かせる仕事を探してみてはどうか。と、自分もたまに考えています。

 最後に、自分が好きな職業を選ぶべきが、得意な職業を選ぶべきか、について、島岡 要 先生のエントリ『ハーバード大学医学部留学・独立日記:好きなことを仕事にすべきか (revisit)』を引用します。

「好きなことを仕事にすべきか」という今までに何度も取り上げられたキャリアにおける永遠の問いに、中村うさぎさんはノーと言います:


(ひとは)好きだったことを、突然嫌いになることは(しばしば)あるが、得意なことが、突然苦手になることはめったにない。ー執筆前夜



好きなことを仕事にしたばかりに、嫌いになってしまうことが往々にしてあるでしょう。ですから、むしろ得意なことをまず仕事にして、周りから認められてその仕事を好きになるというポジティブフィードバックを利用するのがStrengths-based approachの考え方。

それでは、その仕事が得意なんだけどなかなか好きになれない時にはどうするか。仕事を変える前にすべき対処法はいくつもあると思いますが、私の案を2つほど:
1)得意であること(高いパフォーマンス)を褒めてくれる人を探す(見つかるまで探す)。そして褒めてもらう。
2)自分がどれだけ達成したかを紙(またはブログなど)に書いて読み返して、自分が成し遂げたことの棚卸しをして、自分で自分をほめる。

つまり、好きになる対象を「仕事」から「仕事をしている自分」に移してみるのがいいかもしれません。
 私も研究以外の得意な仕事ジャンルを考えてみたいと思いました。

【参考記事】

◆『5号館のつぶやき: ポスドク問題は終わったのかもしれない
◆『【博士学生・ポスドク対象】Ph.D.交流会:【Ph.D.交流会の運営方針(仮)】
◆『Sasaki Takanori Online:Ph.D.交流会 with dankogai
◆『404 Blog Not Found:中卒の私がなぜかPh.D交流会に呼ばれたので行ってきた
◆『ハーバード大学医学部留学・独立日記:好きなことを仕事にすべきか (revisit)

【バックリンク】

● キャリア・アドバイス
● Life Sciences Career Day in IPRに参加しました
● バイオポスドクの受難

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