2008年6月8日日曜日

In-silico Human研究会セミナーに参加しました


大阪大学中之島センターで開催された『In-silico Human研究会セミナー』に出席しました。

【演題】

In-silico Human研究会セミナー「In silico ADME & 薬物相互作用データベース」

開会のあいさつ
倉智嘉久(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター・センター長)

「in vitroデータからのヒト薬物体内動態・薬効・副作用発現の予測法」
鈴木洋史(東京大学医学部附属病院薬剤部・教授)

「動態変化を伴う薬物相互作用の網羅的予測とデータベース構築」
樋坂章博(東京大学医学部附属病院薬理動態学講座・特任准教授)

「フィジオームプラットフォームを用いた薬物相互作用データベース構築に関する検討」
野村泰伸(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター・g-COE拠点リーダー)

「創薬におけるインシリコADMEシミュレーションの役割 -インテグレーテッド概念からインシリコスクリーニング、並列創薬への展開-」
湯田浩太郎(富士通株式会社)

閉会のあいさつ
金井好克(大阪大学医学系研究科・教授)


【注目ポイント】

(1)鈴木 洋史 先生 「in vitroデータからのヒト薬物体内動態・薬効・副作用発現の予測法」

 90年代では、人における薬物動態が、2000年代では、心臓障害や肝障害といった副作用が、臨床試験における創薬開発の中止の主な原因となっているそうです。

 薬物動態については、コンパートメントモデルを用いて、薬物のバイオアベイラリティーを数理モデルにより予想されていました。このモデルによって、投与する種差によって、バイオアベイラリティーに大きな差があることを明らかにされていました。今後は、薬物毒性の発生の予測が課題だということでした。


(2)樋坂 章博 先生 「動態変化を伴う薬物相互作用の網羅的予測とデータベース構築」

 薬物相互作用によるCYP3A4の阻害や誘導について、薬物血中濃度(時間曲線下面積:AUC)を予測する数理モデルをもちいて、網羅的に薬物相互作用を予測されていました。

 CYP3A4に限っても、併用する薬物のパターンは200種類以上考えられるため、そのすべてを臨床試験で検証することは、不可能です。そこで、樋坂先生は、AUCを基質薬物の経口クリアランスの寄与率と、CYP3A4の阻害剤や誘導剤を予測する数理モデルを臨床試験の研究結果から構築されていました。このモデルにより、これまで注意されていなかった薬物相互作用の中から、禁忌となりうる薬物の組み合わせを見つけられていました。

 先に述べた通り、組み合わせて検査すべき薬物は、既に組み合わせ爆発を起こしているだけでなく、次々と新薬が市場に出回ることになります。樋坂先生のモデルは、非常に精度よく薬物の相互作用を予測できるため、臨床的にも非常に有用な研究成果だと思いました。


【感想】

 意見交換会では、多くの先生方が出席されました。日本の歴史から、今後のプロジェクトの方向性まで、非常に幅広いお話も聴くことができました。印象に残った一言を書き記しておきます。

 *技術が大切だ
 *日本語(の論理)に縛られるな
 *何でも体験し、その苦労を知れ


【参考サイト】

日本製薬工業協会

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