2008年4月29日火曜日

これからホームページをつくる研究者のために


これからホームページをつくる研究者のために
—ウェブから学術情報を発信する実践ガイド
(ACADEMIC RESOURCE GUIDE)

岡本 真


 本ブログは、読者にとってどうあるべきか、自分は、どう作っていくべきか、について考えようと購入しました。詳細は、今後レポートいたします。

【目次】

第1部 個人ホームページをつくる前に
1章 なぜホームページをつくるのか
2章 つくる前に知っておきたいこと

第2部 個人ホームページをつくる
1章 講義資料を活用する
2章 研究資料を活用する
3章 調査資料を活用する
4章 著作物を活用する
5章 ネットで執筆する
6章 インターネットリソースをつくる

第3部 個人ホームページをつくった後に
1章 個人ホームページをつくる研究者のための10ヶ条
2章 先行事例に学ぶ


【参考文献】

情報管理 Vol. 49 (2006) , No. 2 p.86-88
『これからホームページをつくる研究者のために』刊行を前にして
―いまなぜ研究者の個人ホームページなのか
岡本 真
J-STAGEで見る


【参考サイト】

(1)
『「これからホームページをつくる研究者のために」サポートブログ


(2)
『Dorm B:これからホームページをつくる研究者って、教授?

(3)
『しがない地方公務員のメモ帳:「これからホームページをつくる研究者のために」読了

2008年4月28日月曜日

Vistaでデスクトップ検索


Googleデスクトップで、パソコン内のあらゆるファイルを検索する方法を、以前紹介しました。VistaにもGoogleデスクトップはインストールできるようです。でも、もともとVistaには、デスクトップ検索機能が搭載されています。実際使ってみましたが、MacのSpotlightと同じくらいの検索スピードです。

【関連サイト】

Windows Vista:すばやい検索

【関連記事】
『まずは 溶かして 混ぜてみよう!
   :とても便利なGoogleデスクトップ

デスクトップ操作をデモンストレーションする

 デスクトップの静止画を保存するスクリーンキャプチャは、スクラップブックをつくる要領で、毎日よく使っています。最近は、静止画だけでなく、動的な変化を伝えるために、動画も使い始めています。

 ソフトやウェプの使い方を説明するのに、スクリーンキャプチャをたくさん取って、パワポなどに貼付けるのは大変ですね。それで、最近はWinのDxCaptureというフリーのソフトを使って、作業過程を動画で紹介するようにしています。Macも良い動画キャプチャツールがないかと探していたのですが、佐々木 正悟さんが、ブログで有用ツールをまとめているのを見つけましたので、引用しておきます。

デスクトップを録画するためのツールは、最近になって、新しいツールのマニュアルを用意する目的で、非常によく使われるようになってきました。

文章で説明したり、口頭で伝えるのに比べ、操作の実録は、一度録画しておけば視覚的・直感的に理解できるうえ、何度でも、誰もが理解できるといったように、メリットがたくさんあります。

・・中略・・

JING

このJINGも、スクリーンキャプチャとスクリーンキャストの両方ができる、デスクトップ録画ソフトです。ダウンロードソフトながら、Mac OSX、Windowsに両対応していますので、MACユーザーの方は重宝するでしょう。

録画内容は、音声付きでも、音声なしでも、Flashムービー形式で保存されるので、普通にブラウザから見ることができます。Flash動画プレーヤを使っての再生もできますし、Youtubeをはじめとする、動画共有サイトにもアップロード可能です。

個人的には今一番これが気に入っていて、デスクトップ録画はこれですませることがほとんどです。

Jing Project: Visual conversation starts here. Mac or Windows.


今年の Apple Design Awards 2008 受賞作品を眺めていたら、目に留まったのがきっかけで触ってみたところとてもよろしい。ユーザーインターフェイスの優秀さもさることながら、手軽にビデオ加工できたり、書き出しのビデオ品質もかなりいい。

この「Vara Software : ScreenFlow - Professional Screencasting Studio」は、スクリーンの動きを動画におさめてくれるアプリケーション。言葉や文字では、なかなか伝えにくい動作手順などを動画で伝えたい時に活躍してくれます。一通りの録画を終えて、強調したいところをスポットライトや拡大で表示させる編集が簡単にできます。

appling with wordpress:ScreenFlow - スクリーンキャプチャするならこれ。



【参考サイト】

(1)Win / Macでのデスクトップの動画撮影保存ツールのまとめ
『シゴタノ:「やって見せてあげる」ためのツール3種

(2)Winでの静止画像の撮影の仕方と、保存方法について
『吉田印刷所:[6022]スクリーンキャプチャ・スクリーンショットの撮り方:Windowsの場合

(3)ソフトウェア一覧
Vector:グラフィックセーバ(キャプチャ)

【080510 追記】

【参考サイト】

(1)Mac版Jingの使い方をまとめた記事
  Macの手書き説明書:Jing

(2)Jingでは、動画ファイルが、SWF形式で保存されますので、再生プレイヤーをインストールして使いました。
  Mac用Flashムービー(SWF)再生プレイヤー SAFlashPlayer

(3)Win版Jingの使い方をまとめた記事
  フリーソフトPC元気生活:「Jing」録画ソフト

【バックリンク】

● デスクトップを写真のように保存する

2008年4月27日日曜日

議事録の書き方

 今回は、大人数が出席する会議を1時間でこなしているというライブドア社の会議術についてまとめたブログ『livedoor ディレクターBlog:議事録の書き方 基礎講座』と『20名超の会議を必ず1時間で終わらせる“ライブドア流”会議術』をご紹介します。


【目次】

■議事録の書き方 基礎講座
■20名超の会議を必ず1時間で終わらせる“ライブドア流”会議術
■議事録を書くために必要なポイント
■ 議事録を書く一番のポイント


【注目ポイント】

■議事録の書き方 基礎講座

【02】議事録に必要なこと

◇基本情報を入力する

・会議の名称
・開始日時
・終了日時
・開催場所
・参加者

を列挙します。会議の名称、開催場所は省略せずに記載します。
参加者の部分は、所属組織名と名前を1セットにして記載します。
参加者が多い場合や社内での打ち合わせなどの場合は「さん」「様」などの敬称を省略してもよいでしょう。省略する場合は 敬称略 と書いておくのを忘れずに。

◇項目をわける

基本的には会議の中で話した順番ごとに大項目、中項目を適宜設定してみるとよいかと思います。

◇具体的に書き記す

話した内容を実行にうつすために必要なのは

・誰が
・何を
・いつまでに
・なぜ
・どのようにするのか

◇ちょっとしたポイント

各自の宿題になったものを最初または最後にまとめておくと、情報共有としての効果が期待できます。また、会議が終わってから遅くとも当日中には議事録として送付しておくとよいでしょう。


【04】議事録の例

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議題:livedoor XX 定例会議
日時:2008年4月21日 17:00〜18:00
場所:社内 B2会議室
参加:開発部 S さん、Y さん
   CM 部  櫛井、N さん、B さん
●各自の宿題
・今週中に○○のバグについて再現性があるか調査を行う(N さん)
・来週木曜までに新規作成ページのデザインを4ページ分作成する(Yさ ん)

●MTG の主旨
 livedoor XX について、1週間の実績値報告と
 進捗情報の共有を行うための定例会議。

●進捗の確認
・機能A について
 すでに開発環境で動作している状態になっている。チェック待ち。(S さん)
 →25日までに動作の確認を行う。その後デザイン作成依頼を行う(櫛井)

<中略>

・広告案件B について
 クライアントチェック中。回答は週明け月曜の予定。(N さん)



●その他
・次回から誰か議事録とってください(B さん)
 →T さんが適任なので次回からやってもらう。(櫛井)
------------------------------------------------------------


■20名超の会議を必ず1時間で終わらせる“ライブドア流”会議術

【01】アジェンダは前日のうちに関係者にメールする

会議で使用するアジェンダは、前日のうちに関係者にメールして目を通してもらい、補足がある場合には事前に受け付けます。
そうすることで、参加者が予習をするようになり、会議での話がスムースになります。また、アジェンダの内容によって「今回は欠席する」という判断がしやすくなるのもメリットで、参加してみたらあまり関係のない話しばかりだった、という事態を回避できます。

 この時点で、議題毎に5分単位の時間制限を設けておくのがコツのようですね。予め、時間がかかりそうな案件には長めに配分されているようです。

【02】議題ごとに時間を割り振る

議題が出そろったら、重要度によって順番と時間の割り振りを決めます。
ここで重要なのは、アジェンダにその時間を具体的に記入することです。「いつ終わるのかわからない」状態で話すのと、「5分で結論まで決めないといけない」と思いながら話し合うのとでは、効率が全然変わってくるからです。
さらに、時間割を決めると司会もやりやすくなるのがメリットです。「この議題にはついてはこれで終わり!」とぶった切るには人間力が必要ですが、ちゃんと した時間割があれば「時間内に解決しなそうなので、いったん切って次の議題に進みます」というだけでいいので、誰でもスムースな司会ができます。

【05】話しきれなかったことは会議後の分科会で解決

20名超のメンバーを拘束する会議は必ず1時間で終了しますが、そこで話しきれなかった議題や、数人で話せば済むような内容は、そのまま同じ部屋で分科会が自然と開始されます。ですので、会議室を事前に1時間半で予約しておくと、他の会議に邪魔されずに済みスムースです。


■議事録を書くために必要なポイント

 2005年のブログの『議事録の書き方』に17個の議事録を書くために必要なことが挙げられていたのでまとめて引用しておきます。

その01
 議事録を書くといろんな得があることを知ろう♪
その02
 みんなが利用しやすい形を目指そう♪
その03
 最初は録音したものから議事録を起こしてみよう。
その04
 誰の発言かも書いておきましょう♪
その05
 「会議をしながら議事録を書くことができる」と知ろう♪
その06
 議事録を書くと「聞く力」も伸びるんですね♪
その07
 議事録を書く必要性に何度も気づこう♪
その08
 「会議で決まったこと」と「今後の予定」を書こう♪
その09
 何について話ているの?
その10
 何について話してるかわからないときは全部メモしよう♪
その11
 ついでに自分の知識の棚卸もできちゃうのです♪
その12
 知識を身に付ける動機付けにもなっちゃいます♪
その13
 沢山議事録を書きましょう♪
その14
 今日の会議は「結局何が決まったの?」
その15
 議事録のプロは会議中でも大活躍♪
その16
 会議を分類してみよう♪
その17
 余計な修飾語を省こう♪

 会議内容のカテゴライズと、会議自体の種類、道具の活用についてもまとめられていました。
話の内容をカテゴリーに分けると
聞き取り易いということがわかりました。

さらにカテゴリーに4つの状態があるように思います。
それは次の4つです。

○現状報告
○解決策の提示
○解決策の検討
○今後の予定


会議自体も何種類かに分かれそうですよね。
思いつく限りならべると。

○ブレインストーミング
○共通認識を持ってもらうため
○相手に意思を伝えるため

会議を分類しよう♪

議事録を書く前に会議の内容をどう記録するかという方法ですが、私は次の3つをお勧めします。

1.ノートに記載する。
2.ノートPCを活用する。
3.ICレコーダーを活用する。

・・中略・・

基本的には、ノート、ノートPCと併用し、聞き取れない部分があったら、ICレコーダーの
タイムを書いておきます。(例えば、「来週の打合せ場所は〜〜〜です。」と打合せ場所が聞き取れなかった場合は、ICレコーダのタイムを見て、その時間を記録しておきます。)

 一から録音を再生しながら議事録を書くのは時間がかかりますが、レコーダーのタイムを書き留めておくのは良いアイデアですね。


■ 議事録を書く一番のポイント

 『ほぼ日刊イトイ新聞』にも、議事録のポイントを指摘してあります。要点を引用します。

議事録を書く一番のポイントは、

議題を、「問い」の形にして、
頭に大きくはっきり書く。

・・中略・・

会議やミーティングを成功させる秘訣は「問い」にある。

「問い」に着目した議事録が、書けるようになれば、
自分が会議をするとき、
ずっとうまく切り盛りできるようになる。
だけではない。
メンバーの会議への意識を
グッとアップさせることができる。





【参考書籍】

■ 吉田 新一郎  会議の技法―チームワークがひらく発想の新次元 2000
  参加して良かったと思える会議の仕方について書かれています。

■ 船川 淳志 大学院生のためのアタマの使い方 2006
  効果的な研究会議を開くためのアドバイスが載っています。

【参考サイト】

(1)
『livedoor ディレクターBlog:議事録の書き方 基礎講座

(2)
『livedoor ディレクターBlog:20名超の会議を必ず1時間で終わらせる“ライブドア流”会議術

(3)
議事録の書き方

(4)
『ほぼ日刊イトイ新聞:おとなの小論文教室。Lesson61 「問い」で会議の流れを変える--結果を出す!文章の書き方 (12)議事録

【バックリンク】

◦ 【研究本】会議の技法

デキる大学院生になろう!


化学 63/4 2008年4月号
理系「研究力」向上計画 デキる大学院生になろう!

出版社:化学同人
発売日: 2008/4

メテオ・メディカルブックセンターで詳しく見る

 今回は、『化学』という化学系向けの雑誌を紹介します。「デキる大学院生になろう!」と題した特集が組まれていて、学生の皆さんや学生を指導する方にも参考になると思いましたので、気になるポイントをまとめておきます。

【目次】
◆成功する研究力 1
   実験計画を立てるコツ 自由度の高い「中・長期計画」が鍵!
◆成功する研究力 2
   実験を効率的に進めるコツ 実験の基本は「比較」にあり!
◆成功する研究力 3
   パソコン活用術 データの共有化が研究の効率性を生みだす
◆上手なプレゼン法 1
   口頭発表するときの要件 プレゼンの基本は 「あいうえお」
◆上手なプレゼン法 2
   よい理系文書を書くためのコツ 論理的かつ簡潔な文章を目指せ!
◆特許についての考え方
   研究者が知っておきたい知的財産の基礎
◆教育・研究の場で必須の知識
   研究者が知っておきたい著作権の基礎
◆企業が求める研究者
   SF映画から知る研究者の資質

【注目ポイント】

◆成功する研究力 2
   実験を効率的に進めるコツ 実験の基本は「比較」にあり!(片倉 啓雄)

<ネガ/ポジコンを的確に立てる>

 自然科学の実験では、「比較する」ことが基本となります。片倉先生は、この「比較」という観点から、日々の実験・先行研究・日常生活におけるコツを紹介しています。

 「ネガ/ポジコンを的確に立てる」では、実験を行うときに「何」と「何」を比較するのかを明確に設定して、対照実験を行う重要性を指摘されています。コントロールの重要性については、野村 慎太郎 先生が『研究室へようこそ!』で、説明されています。

実験トラブルに対処する
  Positive controlの利用と注意点
実験結果の判断の仕方
  コントロールを忘れていないか?


<日々の実験と研究全体の目的を比較>

 ある目的をもって、研究を開始したにもかかわらず、日々実験をしているうちに、手段が目的化してしまう問題点が指摘されています。これは、日常的に起こりやすい問題で、ついつい細かいことに注目しすぎてしまいます。「木を見て森を見ず」ですね。

 この問題を回避するコツとして、日々の実験の目的と、研究の目的を明文化することが挙げられています。

<材料は新旧で同じ結果が出るか確認>

 試薬のロットが変わって、実験結果が何となく以前と違うなあ〜という、こちらも日々の実験で頻発する問題ですね。こういう時は大体、サンプルも試薬も以前の実験と違います。怪しい場合は、直ちに、昔うまくいったサンプルを使って、新しい試薬を検証しなければなりませんね。

<複数の方法を調べてカスタマイズ>

 ある目的を達成するための手段を常に複数用意しておくべきということです。また、一定の結果が得られた時は、同じ手法で再現性をとることは必須ですが、違う手法で同じ現象を観察するという「石橋を叩いて渡る」心がけもいいのではないでしょうか?

<必ず過去の結果と比べる>

 新堀 聰 先生が『評価される博士・修士卒業論文の書き方・考え方』で述べられている通り、研究とは、そもそも先行研究業績に新しい知見を上乗せして進行していくものですね。ですので、自分の研究の前提となった論文のなかで参考にした実験結果は、ある程度は再現して確認しておく必要があるということですね。

<「比較」を極めるには>

 研究思考を日常生活に浸透させると良いということでしょうね。

◆成功する研究力 3
   パソコン活用術 データの共有化が研究の効率性を生みだす(岡畑 恵雄)

<スライドの原図に通し番号を付ける>

 私自身も、パワーポイントで作図することが多く、これまで作成したスライドもおそらく数百枚に及んでいます。今のところは、自分の記憶と検索を組み合わせて参照していますが、他人のスライドになるとほぼ記憶できていません。そんな問題を解消してくれるコツが紹介されています。その方法とは、スライド1枚につき「A-1-001」という通し番号を記入していくというものです。"A"は個人を、"-1"はプロジェクトを、"-001"は各スライドを特定しているそうです。

<文章はWord, 図はCanvas>

 論文作成やプレゼンテーションに便利な、WordとCanvasを使っているそうです。

<システムの統一でデータを共有する>

 パソコンは、Macに統一されているそうです。私も、OSの使い勝手は、WinよりMacのほうがいいですし、その上、仕事も効率的にこなせています。

◆上手なプレゼン法 1
   口頭発表するときの要件 プレゼンの基本は 「あいうえお」(尾嶋 正治)

<Plan-Do-Seeと「あいうえお」>

 Plan-Do-Seeとは、「計画・実行・検討」のことです。「あいうえお」は、プレゼンの基本となる型のことです。そもそも、なぜプレゼンテーションが必要なのでしょうか?そのプレゼンの必要性については、八幡 紕芦史さんの『戦略的プレゼンテーションの技術』にまとめられていますので、引用しておきます。

 注意を喚起し、興味をもたせ、理解させ、合意させ、決定させ、行動させるためには、人を集め、あなた自身の口から、あなた自身の考え方を聞き手に直接語りかけるプレゼンテーションでなければならない。
つまり、聞き手を行動させるためには、意思決定させなければならないので、次に書かれているように、「心を動かす」必要が出てきますね。

<聞き手の心を動かす3要素>

 1.主張したい中身
 2.発表者の情熱
 3.プレゼンの基本の”型”

<プレゼン「あいうえお」詳述>

 あ:アイコンタクト、自身演出、誠実に!
 い:一番乗りで、会場検分、四股を踏む!
 う:うしろから、大きなPowerPointよく見える!
 え:笑顔をつくって、緊張解消!
 お:大きな声で、腹の底からはっきりと!

 「あ」では、プレゼンの最大の敵は、”恥ずかしがること”であり、誠実さ・謙虚さを相手に感じさせ、自分の主張点を手短に伝えることの大切さについて説明されています。

 「い」は、精神論的理解が良いのではないでしょうか?(四股を踏んでいる人を見かけたことがないので・・・踏んでも構わないのですが・・・)

 「う」は、大切です。細かくて、いっぱい図が載っているスライドを使って、ごく一部を説明する方が少なからずいらっしゃいます。20ポイント以上のボールドを用いることを推奨されていました。スライドの作製上の注意点は、大隅 典子 先生の『バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本』にまとめられているので参考にして下さい。

 「え」で述べられている、『プレゼンは議論(質疑応答)の前座と考えるべきで、議論が本番です』は、良い心がけですね。参考になりました。

 「お」では、『大きな声で、ゆっくりと、力強く語りかけること』と述べられています。一般的に、日本人は、ゆっくりした話し方のほうが、説得力を感じ、安心感を与えるようです。ちなみにアメリカではこの印象が逆転し、早口だと、説得力があり、知的であると判断されるそうです。専門家が集まる小さいプレゼンなら、早口でも通るのでしょうが、いろいろなバックグラウンドを持った聴衆が集まる場合は、ゆっくり話すのが良さそうですね。

<“美味しいプレゼン”を目指そう>

 本文から、引用しましょう。
「世の中に面白い話を聞く以上の楽しみはない。つまらない話を聞かされる以上の苦痛はない」

 プレゼンテーション(presentation)の語源が、贈る(present)であることを考えると、喜ばれる内容、サービス精神が大切なのは当然ですね。

◆上手なプレゼン法 2
   よい理系文書を書くためのコツ 論理的かつ簡潔な文章を目指せ! 村上 雅人

<上手い文章を書くための基本>

 本文から、2つのポイントをまとめておきます。

 1.良い文章に触れる
 2.上手い文章を真似して、書く訓練をする

<辞書を座右のに置いて書く>

 いろいろな辞書をそばにおいて、用語の正しい意味を確認しながら書くべきであると述べられています。

<推敲を重ねるほど文章はよくなる>

 推敲とは、『詩文を作るとき、最適の字句や表現を求めて考え練り上げること。』を意味します。納得のいくまで、自分の書いた文章を修正して磨くべきであると述べられています。

<事実と意見を区別して書く>

 論文は、実験データや先行研究などの客観的な事実を示した上で、自分の主観的な意見を主張するために書きます。したがって、どこまでが事実で、どこからが意見なのかを明確に区別する必要があります。

 また、研究者の使命と失敗への取り組み方の姿勢についても述べられていたので引用します。

研究者の使命は、はじめからものを否定することではなく、何か問題点なのかを明確にして、それをいかに解決すべきかに挑戦することである。

世の中の失敗には、本質的なものではなく、やり方に問題のある場合も多い。それを精査せずに、最初の結果だけで判断したのでは、ブレイクスルーは決して生まれない。

 この文章を書き出していたら、三洋電機の”エアウォッシュ”洗濯乾燥機開発チームの記事を思い出しました。

「いつからか『できない』と言っても周囲から”それやったんか? 絶対ダメなんか? 可能性はゼロなんか?”と聞かれるようになっていたんです」

 できないと思ってやっていても、できるはずがなく、できると思ってやるからこそ、可能性が見えてくるといことでしょうね。

<好きこそものの上手なれ>

 1.良い文章を書くために、「自分が本当に書きたいもの」があるか?
 2.結果が得られたら、それをすぐにまとめること。

 2.については、論文を書くタイミングについて酒井 聡樹 先生が『これから論文を書く若者のために』に述べられていることと同じですね。「鉄は熱いうちに打て」ということですね。
 
<理系の文書>

 理系の文章は、文学的表現にならないように、具体的に、定量的に書くべきであるという注意点が挙げられています。


【参考書籍】

(1)はじめて研究室に配属される人に向けて書かれた良書です。

研究室へようこそ!—どこにも書かれていないバイオ研究室の実態

野村 慎太郎


(2)論文の書き方の基本を解説しています。

評価される博士・修士卒業論文の書き方・考え方

新堀 聰


(3)プレゼンの必要性から技術まで詳細に解説されています。

戦略的プレゼンテーションの技術—オープンな意思決定のために

八幡 紕芦史


(4)研究室でのプレゼンに大変役立つ一冊です。

バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本

大隅 典子


(5)三洋電機の”エアウォッシュ”の開発過程についての記事が掲載されています。

セオリービジネス vol.1 (2008) (1)

講談社


(6)論文を書く心構えから、実際の手順まで詳細に解説されています。

これから論文を書く若者のために 大改訂増補版

酒井 聡樹


【参考サイト】

(1)Plan-Do-Seeについての解説
ビジネスの基本:仕事の基本(Plan - Do - See)

(2)プレゼンテーションの方法とパワーポイントの使い方の解説
泣ける!!プレゼンテーションへの8つのステップ

(3)推敲についての故事成語のエピソード
故事成語で見る中国史:推敲

(4)大阪市立大学 坂上 学 先生 レポート・論文作成の手引き
1.論文作成のための予備知識

【バックリンク】

● プレゼンテーションをするために注意したいこと
● Life Sciences Career Day in IPRに参加しました
● 学ぶということが創造的である
● 大学院入試と就職活動
● 面接に成功する3つのポイント

2008年4月26日土曜日

ポスドク問題

 stochinaiさんのブログのエントリ『5号館のつぶやき: ポスドク問題は終わったのかもしれない』を読みました。今回は、ポスドク問題についてご紹介します。

 まず、ポスドク問題とは何でしょうか?フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を引用しておきます。

旧文部省の旗振りで始まった大学院重点化計画によって大学院の定員が増え、その結果博士号取得者が増加した。そして増加した博士号取得者の職を補う形として、科学技術基本計画の一部であるポストドクター等一万人支援計画(ポスドク一万人計画)が実施されポスドクの人数は増加した。しかしながら、ポスドクを経験した博士号取得者の行き先として考えられる大学・研究所の定員は増えていない。このことはポスドク問題と呼ばれる。

ここで、出てくるポスドクとは、博士号を取得してから任期付きの研究員などの職を意味しています。簡単にいうと、ポスドク問題とは、常勤職に就けなくなった博士が溢れてしまい、せっかくの人材を活かしきれないという問題を指します。これは、日本の科学研究の推進に関わる重要な問題として認識されています。
 実際、知り合いの学生さんは、学位取得を希望していましたが、ポスドク問題の一連の経緯を考慮した上で、修士を卒業して就職してしまいました。

 それでは、続いて『5号館のつぶやき: ポスドク問題は終わったのかもしれない』を引用します。

 もちろん解決はしていないのですが、「ポスドク問題」が問題として取り上げられることが終わりつつあることを感じています。

 その最大の理由は、大学院の博士(後期)課程に進学する学生が、定員を割っているということです。これは、ポスドク問題あるいは博士の就職難問題に対し て政府が何もやらないあるいは何もできないことを認識した学生が、進学を拒否しているということです。この状態が続くと、10年後くらいにはポスドク問題 は(現在ある問題が何も解決しないまま)自然消滅してしまう可能性が高いと思います。

・・(中略)・・

 ポスドク問題が終わりつつあることを感じるもうひとつの理由は、ポスドクを含む当事者である大学院生や若い科学者達が、自分たちで動き出したことです。

 昨日は、早稲田大学で小飼弾さんを招いてPh.D.交流会があったそうです。

 政府の動きが緩慢なのは、事実でしょう。しかし、大学側もポスドク問題の解決に向けて活動しているようです。実際大学にも、専属の教員を雇用してポスドクの キャリアを支援している部局があるそうです。具体的には、アンケートやヒアリングなどによるポスドクの実情把握や、キャリア相談、ポスドクを経験した社会人を招いた講演会などを行っています。私自身もポスドク経験者として、この問題に協力したいと考えています。

 最後に、早稲田大学で開かれたPh.D.交流会での、小飼弾さんの講演内容をSasaki Takanoriさんの『Sasaki Takanori Online:Ph.D.交流会 with dankogai』から引用します。

弾さん的には

「博士100人の周りには、学も金も職も無い奴が何万といるわけで、そっちを救う方が大事」
「博士まで進むような連中は、”8人”になるリスクがあることを分かった上で自己責任でがんばれ」

ということだそうです。まあ言われてみればその通りですね。このあたりはまた「若者と仕事」問題において、あらためて考えていきたいと思います。


 『自己責任で頑張れ』に深く頷いてしまいました。研究のという職業にとらわれなくても良いのではないか、自分の得意とする技術を活かせる仕事を探してみてはどうか。と、自分もたまに考えています。

 最後に、自分が好きな職業を選ぶべきが、得意な職業を選ぶべきか、について、島岡 要 先生のエントリ『ハーバード大学医学部留学・独立日記:好きなことを仕事にすべきか (revisit)』を引用します。

「好きなことを仕事にすべきか」という今までに何度も取り上げられたキャリアにおける永遠の問いに、中村うさぎさんはノーと言います:


(ひとは)好きだったことを、突然嫌いになることは(しばしば)あるが、得意なことが、突然苦手になることはめったにない。ー執筆前夜



好きなことを仕事にしたばかりに、嫌いになってしまうことが往々にしてあるでしょう。ですから、むしろ得意なことをまず仕事にして、周りから認められてその仕事を好きになるというポジティブフィードバックを利用するのがStrengths-based approachの考え方。

それでは、その仕事が得意なんだけどなかなか好きになれない時にはどうするか。仕事を変える前にすべき対処法はいくつもあると思いますが、私の案を2つほど:
1)得意であること(高いパフォーマンス)を褒めてくれる人を探す(見つかるまで探す)。そして褒めてもらう。
2)自分がどれだけ達成したかを紙(またはブログなど)に書いて読み返して、自分が成し遂げたことの棚卸しをして、自分で自分をほめる。

つまり、好きになる対象を「仕事」から「仕事をしている自分」に移してみるのがいいかもしれません。
 私も研究以外の得意な仕事ジャンルを考えてみたいと思いました。

【参考記事】

◆『5号館のつぶやき: ポスドク問題は終わったのかもしれない
◆『【博士学生・ポスドク対象】Ph.D.交流会:【Ph.D.交流会の運営方針(仮)】
◆『Sasaki Takanori Online:Ph.D.交流会 with dankogai
◆『404 Blog Not Found:中卒の私がなぜかPh.D交流会に呼ばれたので行ってきた
◆『ハーバード大学医学部留学・独立日記:好きなことを仕事にすべきか (revisit)

【バックリンク】

● キャリア・アドバイス
● Life Sciences Career Day in IPRに参加しました
● バイオポスドクの受難

2008年4月20日日曜日

トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボローム,フラクソームの統合による大腸菌の代謝解明



メタボローム—代謝研究の新潮流
代謝プロファイル,低酸素応答,タンパク質機能解析と肥満・炎症メカニズムの解明から食品開発まで
曽我 朋義 /企画
出版社:羊土社
発売日: 2007/12
Amazon.co.jpで詳しく見る


トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボローム,フラクソームの統合による大腸菌の代謝解明
石井伸佳/曽我朋義/冨田 勝

今回は、石井先生の大腸菌を用いたマルチオミクス解析についてご紹介します。

【目次】
はじめに
1.Keio collectionの連続培養
2.マルチオミクス解析
3.代謝のロバスト性を実現するための大腸菌の戦略
おわりに

【注目ポイント】
はじめに

 メタボローム研究において、最近進歩した技術の1つには「代謝フラックス解析」があるそうです。これによって、多数の代謝経路に含まれる代謝物が網羅的に測定できつつあるようです。

 この代謝フラックス解析やマイクロアレイ、質量分析装置を使ったショットガン分析により、トランスクリプトーム・プロテオーム・メタボロームの観察が可能となりました。しかし、単独のオーム階層(たとえば、遺伝子発現だけの網羅的解析など)の中だけでの解析で生体の状態を予測するのは必ずしも容易ではありません。私自身も、トランスクリプトームやプロテオーム解析を個別にそれぞれ研究してみてこのことが痛感させられます。

 そこで、石井先生は、以下の問題意識のもと、複数のオミクス解析を行い、結果を統合することにより新たな知見を得ることに成功したそうです。その問題意識について、引用します。

 各種の「オミクス解析」が試みられるようになってきたものの、得られた網羅的データから何らかの有意義な生物学的知識を獲得するのは必ずしも容易ではないことが次第に認識されてきた。その理由の1つとしては、単一の「オミクス解析」は、結局、細胞機能のある特定の階層に関するきわめて限定された情報を持つに過ぎず、細胞の活動全体を把握するには必ずしも十分ではないことがあげられる。

1.Keio collectionの連続培養

 今回の解析には、中心炭素代謝系(解糖系・ペントースリン酸経路・クエン酸回路)遺伝子を欠損した大用金(K-12)24株を用いています。また、連続培養とは、一般的な閉鎖系の大腸菌培養とは異なり、大腸菌の代謝反応に必要な基質溶液を、連続的に培養液に送液すると同時に、一定流速で菌体液をサンプリングする方法です。このような大腸菌の定常状態での培養は、代謝フラックス解析にとって必要だそうです。これにより、一定条件で観察が可能になるからでしょう。

 大腸菌への刺激は、内的刺激として遺伝子欠損を、外的刺激として基質の濃度変化を採用しています。

2.マルチオミクス解析

マルチオミクス解析に用いた方法
(1)Transcriptome:DNAマイクロアレイ法/定量PCR法
(2)Proteome: 二次元電気泳動法/液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法
(3)Metabolome:キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析法
(4)Fluxome:ガスクロマトグラフィー-質量分析法による同位体代謝物の分布解析

これらの測定結果は、web Escherichia coli Multi-omics Databaseで公開されています。

3.代謝のロバスト性を実現するための大腸菌の戦略

実験結果のポイント
(1)一遺伝子欠損株では、mRNA、蛋白質、代謝物質のいずれもあまり大きな変動はみられない。
(2)野生株では、mRNA、蛋白質は基質量の変化に追随して変動するが、代謝物質はあまり変化しない。

 (1)の一遺伝子欠損のような内部変化に対して、大腸菌はそれほど大きな対応をとらないことが伺えます。マウスではノックアウトにより大きく表現系が変わる例もあり、種ごとに差があることを示している結果といえます。(もちろん大腸菌にも約7%の生存に必須といわれる遺伝子があるそうなので、欠損しても生理機能を維持できる遺伝子とそうでない遺伝子があることには変わりなさそうです。)

 また、遺伝子が欠損しても代謝反応が維持されるのは、欠損遺伝子のアイソザイムによる代替や迂回経路などの形成によると考えられています。

 以上の一遺伝子の欠損は代謝系に大きな影響を及ぼさないという結果は、生体がシステムとして機能している証明のひとつと考えられます。つまり、脆弱性を抑え、頑強性(ロバストネス)を獲得した大腸菌の生き残り戦略なのでしょう。

【語句説明】
*1:メタボロミクス
 全代謝物質の網羅的測定を目的とする研究。ガスクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・キャピラリー電気泳動・フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴と質量分析装置を組み合わせた、GC-MS, LC-MS, CE-MS, FT-ICRMSや核磁気共鳴装置(NMR)などを用いて計測する。

*2:代謝フラックス解析(metabolic flux analysis)
 安定同位体ラベル基質を用いて、幾何学的に複雑な代謝系の代謝フラックスを推定する方法。

*3:代謝フラックス
 細胞や菌体内における物質の流れ。細胞内の化学反応の化学量論モデルと代謝物間の質量作用則から導かれる細胞内の代謝物の流速(フラックス)である。

*4:Keio collection
 大腸菌K-12の全ての遺伝子の一欠損株のコレクション。大腸菌の遺伝子は4,400程度であることが明らかにされている。

【参考サイト】
Escherichia coli Multi-omics Database
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科 生体情報学 森 浩禎 教授 研究室

【参考文献】
Ishi N, Nakahigashi K, Baba T, Robert M, Soga T, Kanai A, Hirasawa T, Naba M, Hirai K, Hoque A, Ho PY, Kakazu Y, Sugawara K, Igarashi S, Harada S, Masuda T, Sugiyama N, Togashi T, Hasegawa M, Takai Y, Yugi K, Arakawa K, Iwata N, Toya Y, Nakayama Y, Nishioka T, Shimizu K, Mori H, Tomita M.
Multiple high throughput analyses monitor the response of E.coli to perturbations. Science, 2007. 316(5824): 593-597.

【参考記事】
◆システムバイオロジーにおける網羅的測定の必要性
『まずは 溶かして 混ぜてみよう!:システムバイオロジー part2

若手が将来の科学政策を考えないでどうする



 今回は、先日出席した日本生理学会『まずは 溶かして 混ぜてみよう!:第85回 日本生理学会大会に参加しました』で行われていた、シンポジウムについて大隅 典子 先生のブログを引用しながら、研究者を職業という点から考えてみます。

以下は、若手研究者の実情について議論されたシンポジウムの締めくくりに、大隅先生が一言まとめられて(話したかった)内容だそうです。

アカデミアというのは、好きなことを仕事にできる幸せな職業の一つです。「好き」だからこそ仕事に没頭し、ワーク&ライフバランスが「ワーク」に傾くこともありがちかもしれません。でもそのバランスは状況に応じてflexibleであるべきで、そういう働き方の多様性を認めることが(男女関係なく)学術の発展に重要でしょう。
もう一つ「メンターが大切」というご指摘がありました。年長のメンターの方も大切ですが、いろいろなことを相談でき、批判もしてくれる「友人」も大切です。同じ業界の違う組織の方でも、同じ職場で違う分野の方でも、あるいは、仕事はまったく関係ない、趣味を同じくする方でも。そんな多様な人間関係が、心を豊かにし、ストレスを和らげ、また、違った発想を生むことになるでしょう。


 たしかに、「好きなことして仕事してるんだから・・・」などと、他の業種の方に私もよく言われます。自由に仕事しているというイメージが一般的にも広まっているのでしょう。私自身は、正社員として働いたことはありません。ですので、厳密には分かりませんが、研究職というくくりの中で企業人と大学人を比べると、やはり大学人のほうが自由度(いろいろな意味で)は高いのだろうと感じています。

 ただし、この自由度には向き不向きというか、得意不得意があると感じています。つまり、一定範囲内でという条件付きで、何をやっても良いと言われて、嬉々として研究に没頭できるタイプと、何をしていいか分からなくなるタイプに分かれるということです。前者は、方向性を間違わない限りは問題ないように思います。後者は、悩みながらも一生懸命「何をすべきか」を考える機会を持つという点では問題ないと思います。ただ、その過程が苦しいので、しばしば後者は悩みのタネになるでしょうね。

 私自身は、おおむね前者であろうと思います。(たまに、何をしていいか分からなくなる。こともありますので)また、自分が後者になった場合は、やはり非常に苦しみながら、一生懸命「何をすべきか」を考えるようにしています。

 メンターの大切さは、ここ最近注目されていますし、私自身にも数人のメンターと「心の師」がいます。研究職は、とかく”研究だけ”になりがちですが、例えば、アルバイト・趣味・習い事といった外の世界との繋がりを維持することも大切だと思っています。そういう繋がりは、精神を維持するだけでなく、研究アイデアの着想にも影響を及ぼすような気がします。

【関連記事】
◆『大隅典子の仙台通信:好きなことを仕事にできるという幸せ・その1
◆『大隅典子の仙台通信:好きなことを仕事にできるという幸せ・その2
◆『まずは 溶かして 混ぜてみよう!:第85回 日本生理学会大会に参加しました

宮大工に学ぶウェブ時代の学びの姿勢



 今回は、ktdiskさんのブログ『Casual Thoughts:宮大工に学ぶウェブ時代の学びの姿勢』をご紹介しましょう。

口で言えば30分で済むことでも、教えないと本人が気づくまで2〜3日かかることもあります。でも自ら気づき、学んだことでないと身につきません。
・・(中略)・・
大事なのは、良質のインプットを多くえながらも、「分かった気にならなない」ための自分なりの工夫やノウハウの確立することがウェブ時代に重要な学びの姿勢だと思う。


 ウェブの世界だけでなく、研究の進め方や実験の手技など、口や文章では伝えられないことも多くあります。また、"How to"を教えるよりも、"How ?"と疑問を持ってもらうべき局面もあると思います。ですので、「口で伝えられることには、限界があり、技や思考はまねぶ(学ぶ)べきである」ということを常に念頭に置く必要があると思っています。

 これからも、日常的に、学びの姿勢を忘れずに生活しようと思います。

【関連記事】
『Casual Thoughts:宮大工に学ぶウェブ時代の学びの姿勢

2008年4月19日土曜日

送別会がありました

ある先生が、留学されるそうで、4月いっぱいで退職されることになりました。そこで、送別会が開かれました。送別会には、多くの先生方が出席され、暖かい激励の言葉をかけられていました。とても信頼されている先生だったので、普段の仕事ぶりが垣間見えました。

私自身も、右も左も分からないときからいろいろと教えていただき、また学会やシンポジウムのお手伝いを一緒にさせて頂いたりと、とてもお世話になりました。

とても、良い先生であり、すばらしい研究者なので、きっとこれからもご活躍されると信じています。

ご家族で、新たな生活をどうか楽しんでください。

そう思う、春の一日でした。

2008年4月3日木曜日

システムバイオロジー part2


システムバイオロジー—生命をシステムとして理解する
北野 宏明
303ページ
出版社:秀潤社
ISBN:9784879622402
発売日: 2001/06
Amazon.co.jpで詳しく見る


【目次】

第1章 システムバイオロジー インフラクトラクチャー

1 システムバイオロジーのためのソフトウエア基盤

2 生物学におけるシミュレーションの意義

3 シミュレーションへのアプローチ
3−1 モデルの記述と枠組みの定義
3−2 ブラックボックス化
3−3 モデル構造の決定
3−4 パラメータ決定

4 シミュレータの現状と構造

5 技術的課題
5−1 確率過程のシミュレーション
5−2 数値計算誤差
5−3 理論的枠組み
5−4 標準化

6 実験と計測
6−1 網羅的計測
6−2 定量測定
6−3 体系的測定

7 実験・測定装置の開発事例


【注目したポイント】


 今回は、前回に続いて、北野 宏明 さんの著書「システムバイオロジー」の1章『序章 第1章 システムバイオロジー インフラクトラクチャー』をご紹介します。

 システムバイオロジーは、研究に必要なインフラクトラクチャーを整備する必要があります。インフラクトラクチャーとは、基盤となる環境のことです。では、なぜインフラクトラクチャーを整備する必要があるのでしょうか?それは、生命現象をシステムレベルで理解のためには、どうしても大規模実験や高精度実験が要求されるだけでなく、取得したデータをモデル化・シミュレーション・解析を行う必要があるからです。

1 システムバイオロジーのためのソフトウエア基盤

 先に述べたとおり、大規模なデータ解析をするためには、ソフトウエアが、非常に重要な位置を占めることを北野先生は指摘されています。また、システム解析の一連の過程の中でも、シミュレーションが注目されがちであるが、統合されたシステムのごく一部を構成する要素にすぎないことも注意されています。具体的なシステム構成についても紹介されていたので引用します。(ただ、このシステム構成は、システム構造の理解とシステムの動的挙動の理解を目的としているので、システム制御とシステムデザインにまで踏み込んだ構成になっていないそうです。)


(1)データ収集・データベースシステム:
実験データを収集し、データベース化し、この統合環境で利用できるように整備するシステム

(2)遺伝子回路推定システム:
発現プロファイルなど実験データから、遺伝子回路を推定するシステム

(3)パラメータ推定システム:
実験データから、遺伝子回路のパラメータを推定するシステム

(4)シミュレータ:
モデルの挙動をシミュレーションするシステム

(5)挙動解析システム:
シミュレーションと連動し挙動の解析を行うシステム

(6)実験計画立案システム:
遺伝子回路の推定結果などから、実験計画の示唆を行うシステム


2 生物学におけるシミュレーションの意義

 重要な生命現象は、経時的に変化するすることが多々あります。『これを理解するためにはシミュレーションを行って、そのダイナミクスを少しでも理解するアプローチを突き詰めるのが現在もっとも有望な方法論であろう。』と説明されています。ここで、シミュレーションの目的について2つ挙げられています。

(1)すでに理解している情報をもとにモデルを構築し、シミュレーションによって、その挙動がどのようになるかを調べる。

(2)遺伝子回路の構造などを推定・検証するためにモデルを構築し、シミュレーション結果が実際の実験結果と一致するかを検証する。

(1)は、完成されたモデルをもとに、パラメータを変化させることにより、未知の現象を観察しようということでしょう。また、(2)は、遺伝子回路のブラックボックスをなくしていく作業だと考えられます。

3 シミュレーションへのアプローチ

 シミュレーションを行うまでの、手順について説明されています。

3−1 モデルの記述と枠組みの定義
SBMLなどで、機械に分かるように記述する。(→詳細は『コンピュータの中の脳—情報基盤の進化輪—6.セマンティックウェブ』をご覧下さい

3−2 ブラックボックス化
詳細におよぶ部分と不明な部分はブラックボックス化する。

3−3 モデル構造の決定
2つの手法
*トップダウン:大量の発現データから自動的に遺伝子回路の推定を行う。
*ボトムアップ:多量の文献から遺伝子の相互作用の情報を集めてモデルとしてまとめる。

→ 私は、ミドルアウトというか、ハイブリットというか分かりませんが、中間的なアプローチもあると考えています。

3−4 パラメータ決定
構造が定義されると、各々のプロセスに関わるパラメータを決定する。
→ その回路がどのような挙動を示すのかを正確に理解できる。

6 実験と計測

 システムバイオロジーで要求される測定は、網羅的、定量的、体系的であることが重要です。これは、黒田先生のシグナル伝達解析、上田先生の概日応答遺伝子解析、児玉先生の転写ファクトリー解析を見ていてもよく理解できます。

6−1 網羅的計測
 3つの網羅性があります。

(1)因子網羅性
ex) 遺伝子全てをアレイで測定

(2)時系列網羅性
現象の変化過程を追跡できる十分なタイムポイント

(3)項目網羅性
注目ている相互作用に対して、遺伝子発現、蛋白質相互作用、リン酸化、細胞内局在などをほぼ同一のサンプルでの同時測定が望まれる

6−3 体系的測定
 別々の項目に対する測定が連動していて、(例えば、蛋白質・遺伝子発現・生理活性物質などの同時測定)データ間の統合的解釈が可能であるように計画されていることが重要だそうです。


【バックリンク】

● トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボローム,フラクソームの統合による大腸菌の代謝解明
● in silico medicine 第5回 定例シンポジウムに参加しました